放熱量
火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
衛星による観測
地表温度の観測は噴火災害の防止や火山噴火機構の解明に重要ですが,地上や航空機から地表の温度を観測する場合には観測者に危険が及ぶ可能性があります.しかし,衛星によるリモートセンシングを用いた表面温度観測ではその危険が無く,活火山の監視に有用な手法の一つです.ここでは,薩摩硫黄島火山の硫黄岳の放熱量を,Landsat衛星に搭載されたTMセンサによる観測データから推定する方法とその結果についてUrai(2002)に基づいて紹介します.(もっと読む・・・)
火山からの総放熱量
硫黄岳全体についてみると,人工衛星によって得られた放熱量値は,その他の結果に較べて低めに見積もられているようです.それは,分解能のため,山麓の噴気地が充分に観測されていないためであると推測されます.低めに見積もられていることを考慮しても,人工衛星の結果は,竪穴状火孔の拡大が活発であった1996年にかけて,かなり放熱量が上昇したことを示しています.その後は,150MW程度の安定した値を示し,以前のレベルに戻っているようです.
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火山熱水系の考察
硫黄岳の火山熱水系については,熱的,地球化学的な観測結果を元に定性的なモデルが考えられています.山頂からはマグマの脱ガスによって高温(最高温度約900℃)の火山ガスが大量(400kg/s程度)に長期間にわたって放出されています.このような火山ガスは火道のような弱線を上昇しますが,その過程で一部が周囲へもれ,それが地下水などと混合することによって冷却し,低温噴気孔や噴気地などの熱活動をもたらします. (もっと読む・・・)