4.2 新期榛名火山
4.2.7 行幸田扇状地堆積物(My)
地層名
大島(1986)による行幸田泥流を再定義し,行幸田扇状地堆積物と呼ぶ.
模式地
渋川市行幸田付近.
層序関係
古期榛名山扇状地堆積物を覆う.また15kaの浅間板鼻黄色軽石層の上位を覆う.本層の上位を覆う黒土層には浅間C軽石層,榛名二ッ岳テフラが挟在する.渋川市行幸田付近では,本層の上位に約40cmの黒褐色土層を挟んで浅間Cテフラが覆う.さらにその上位には約30cmの黒土層を挟んで,榛名二ッ岳渋川テフラが覆う.
分布
渋川市行幸田付近の唐沢川沿いに分布し,渋川市行幸田中筋付近で利根川の沖積地上に扇状地を形成する.
岩相・構造
本層が作る扇状地地形のほぼ中央部に当る渋川市石原で造成工事に伴い露出した本層は,淘汰の悪い輝石安山岩火山亜角礫~亜円礫からなり,同質の火山礫・火山砂及び風化土壌に由来する粘土からなる.最大径約40cmの安山岩の亜円礫が含まれる.安山岩礫の多くは風化している.堆積物中にはパッチワーク構造やブロックに発達するジグソー割れ目構造などの岩屑なだれ堆積物に特徴的な構造が認められない.このことから,渋川市石原付近の本層を岩屑なだれ堆積物であるとは認定することは困難であり,また本層に含まれる礫は主に亜円礫であることから,ここでは河川による扇状地性堆積物と考える.本層の分布は唐沢川沿いに限られ,その上流部には古期榛名火山噴出物からなる山体に,水沢山溶岩ドームを囲むような馬蹄形の急峻な崩壊地形が認められる.本層の分布や含まれる岩片の岩質などから,本層を構成する堆積物はこの崩壊地形から供給されたものであろう.なお本層には水沢山溶岩ドームを構成する角閃石安山岩礫が含まれないことから,水沢山溶岩ドームの形成に先行して形成されたと考えられる.本層は,唐沢川源頭部の古期榛名火山山体が水沢山溶岩ドームの出現の直前に小規模に崩壊し,その崩壊堆積物が唐沢川によって二次的に運搬され利根川沖積面上に扇状地を形成したものと考えられる.
地質年代
降下テフラとの層序関係から,水沢山溶岩ドームの形成直前の約1万年前に形成されたと考えられる.