4.2 新期榛名火山
4.2.14 二ッ岳溶岩(Fl)
地層名
本報告では二ッ岳溶岩ドーム(大島,1986の二ッ岳溶岩円頂丘)を構成する溶岩を二ッ岳溶岩と呼ぶ.
模式地
渋川市伊香保町の二ッ岳山頂周辺.
層序関係
榛名二ッ岳伊香保降下軽石を直接被覆する.
分布
本溶岩は二ッ岳溶岩ドーム(標高1,343m)を構成する(第46図).二ッ岳溶岩ドームは山頂部が3つに分かれたほぼ円錐形の山体からなる.二ッ岳溶岩ドームは,相馬山溶岩ドームの東面に形成された馬蹄形の火口地形(オンマ谷)の中に形成されている.崖錐堆積物を含めた二ッ岳溶岩ドームの大きさは最大比高340m,面積0.84km2,体積0.09km3である.
二ッ岳の上半分の急斜面には溶岩ドームを構成する塊状の溶岩が露出し,中腹以下の緩斜面は溶岩ドームの成長に伴う崖錐堆積物からなる.北側の渋川市伊香保町高根付近から見る.
(図幅第6.29図)
岩相・構造
二ッ岳溶岩ドームの表層部は,径数mに及ぶ溶岩塊で覆われる.溶岩ドーム山頂部には,溶岩ドーム本体を構成する溶岩が部分的に露出する.溶岩ドーム表面の岩塊は赤色酸化を被っている.また溶岩ドーム表面の傾斜がやや緩くなる標高1,200m以下の部分は主に溶岩ドームの成長に伴い崩落した岩塊からなる崖錐堆積物からなる(第47図).
岩質は斜方輝石普通角閃石安山岩からなる(第48図).含まれる斑晶鉱物は斜方輝石,普通角閃石,斜長石からなり,少量の磁鉄鉱,アパタイトを伴う.
表面に冷却節理が発達する二ッ岳溶岩のブロック.二ッ岳東麓の崖錐堆積物上.
(図幅第6.30図)
Pl:斜長石,Hb:普通角閃石,Op:斜方輝石,Mt:磁鉄鉱.写真の横幅約2.5mm.
GSJ R94150.
(図幅第6.31図)
地質年代
本溶岩に対する直接の年代測定値は報告されていないが,二ッ岳伊香保テフラの給源に分布し,かつ二ッ岳伊香保テフラを直接覆うこと,二ッ岳伊香保テフラと岩相が類似することなどから,6世紀後半から7世紀初頭の榛名二ッ岳伊香保噴火の末期に,その噴出口を埋めて形成したと推測される.