榛名火山は底面の直径約25km,最高点(掃部ヶ岳)標高1,449mの大型の成層火山である.榛名火山は侵食の進んだ成層火山体(古期榛名火山)と,その山頂部に形成された東西約3km,南北2kmの小型の榛名カルデラおよびカルデラ形成後に噴出した溶岩ドーム群からなる(新期榛名火山). 榛名火山の活動史は,成層火山を形成した古期榛名火山と,山頂部の榛名カルデラの形成期以降の新期榛名火山に大別できる.
3.1 古期榛名火山
古期榛名火山の活動は,約50万年前頃から開始し,約24万年前頃まで活動したと考えられる.古期榛名火山の活動の開始についての直接的な情報はほとんど得られていないが,榛名火山の成長に伴って形成されたと考えられる中之条盆地の湖成層や,萩生層の年代から推定すると,50万年前ごろに火山体が形成され始めたのではないかと考えられる.古期榛名火山は主に溶岩流と降下火砕物の噴出によって成長した成層火山である.約24万年前ごろには比較的規模の大きな火砕流の噴出が相次ぎ,山麓に宮沢火砕流堆積物をもたらした.宮沢火砕流は現在の榛名カルデラ付近から噴出したと考えられるが,その噴出位置などの詳細は不明である.その後,約20万年間の活動の休止期をはさみ,約5万年前から新期榛名火山の活動に移行した.
3.2 新期榛名火山
新期榛名火山の活動は,約5万年前の八崎降下軽石・白川火砕流の噴出で開始した.八崎降下軽石・白川火砕流を噴出した噴火時に榛名カルデラが形成されたと考えられている.カルデラ形成後現在までに,榛名富士,蛇ヶ岳,相馬山,水沢山,及び二ッ岳の,少なくとも5個の安山岩溶岩ドームが形成された(第3図).これらの活動によってもたらされた火砕物の一部は再移動し,榛名山東側及び南側山麓に大規模な山麓扇状地を形成した.これら後期更新世から完新世の活動による噴出物を新期榛名火山噴出物と呼ぶ.現在知られている最新の活動は伊香保降下軽石,伊香保火砕流及び二ッ岳溶岩ドームを噴出した6世紀の噴火である.
網掛けのユニットは溶岩流.破線で囲ったユニットは降下テフラ及び岩屑なだれ堆積物.主な外来テフラの層位を点線で示す.AT:姶良-Tnテフラ,As-BP:浅間板鼻褐色軽石,As-SP:浅間白糸軽石,As-YP:浅間板鼻黄色軽石, As-C:浅間C軽石,As-B:浅間天仁テフラ.
(図幅第6.1図)