1．地形
4_1_1 古期榛名火山噴出物4．1 古期榛名火山
4．1．4 宮沢火砕流堆積物（Mpf）
地層名
榛名火山南麓にあたる高崎市下室田から宮沢にかけての地域には，火山山麓扇状地堆積物中に複数の火砕流堆積物が分布する（日本鉄道建設公団東京新幹線建設局，1998）．大島（1986）は，この地域で2枚の火砕流堆積物を認識し，下位から「第一火砕流」及び「宮沢火砕流」と命名した．早田（2000）は「宮沢火砕流」を複数の火砕流堆積物からなるとして「宮沢火砕流群」と称し，「氷室カルデラ」の形成に伴う噴出物と考えた．また，山元（2006）は栃木県内のテフラの対比のため，本図幅地域の火砕流堆積物中の斑晶鉱物の屈折率を報告した．さらに，竹本（2008）は本地域で上宮沢火砕流の存在を指摘し，11万年前頃の噴出物とした．これらの本図幅地域の火砕流堆積物の区分は，いずれの報告も火砕流堆積物の分布や層序，岩相，岩石学的特徴等についての記載が欠如するため，それぞれの名称がどの火砕流堆積物に対応するかが不明確である．本報告では，高崎市宮沢～神戸付近の扇状地を形成する輝石安山岩の火砕流堆積物を，古期榛名火山扇状地堆積物のサブユニットとしての宮沢火砕流堆積物と再定義する．本報告による宮沢火砕流堆積物は，その分布から大島（1986）による宮沢火砕流，日本鉄道建設公団東京新幹線建設局（1998）による中期火砕流堆積物にほぼ相当すると考えられる．
模式地
高崎市宮沢町上宮沢付近及び高崎市神戸町．
分布
本図幅内では模式地付近から高崎市下室田～神戸の烏川左岸に広く分布する．北陸新幹線沿いでの本層の層厚は15～30mである（日本鉄道建設公団東京新幹線建設局，1998）．本層は榛名山東麓の渋川市行幸田，榛東村富士見峠付近にも広く分布する．また，「中之条」図幅内の榛名火山北麓の扇状地にも広く分布する．
層序関係
古期榛名火山扇状地堆積物に挟在する．その上位は古期榛名火山扇状地堆積物の土石流堆積物に覆われる．矢口ほか（1993），矢口（1999）は，榛名山から東方に17km離れた群馬県北橘村で，本火砕流堆積物に対比される降下テフラを見出し，榛名富士見（宮沢１）軽石層と命名した．
岩相及び構造
模式地を含む高崎市宮沢町の上宮沢付近から下室田付近にかけて露出する本層は，厚さ20m以上のスコリア流堆積物である（第16図）．高崎市神戸付近では，本層はその岩塊の粒径や岩塊と基質の比率等から複数のフローユニットに区分できる．それぞれのフローユニットの層厚は最大3～5mである．それぞれのフローユニット内でも岩塊の粒径や岩塊と基質の比率等は不均質で，しばしばフローユニットの上部により大型の岩塊が集中する（第17図）．高崎市上宮沢付近では，しばしば発泡の悪いスコリアあるいは石質岩片に富むフローユニットがみられる．本層の上面から１～2mは高温酸化によって淡赤色を帯びる．
スコリア塊や軽石塊の粒径やその含有量の違いによる層状構造が認められる．
（図幅第5.15図）
本層は直径1cm以上のスコリア及び軽石塊がその大半を占めるが，ほとんどの地点では基質支持である．スコリア及び軽石塊の礫径は平均5～15cmの場合が多いが，30cmを超える大型のスコリア～軽石塊が濃集する箇所が見られる（第17図）．スコリア及び軽石塊は円磨しており，亜円礫～亜角礫状である．発泡の悪いスコリアあるいは石質岩片は，角礫～亜角礫状である．
スケールは縦80cm横20cm．高崎市中室田大久保．
（図幅第5.16図）
本層に含まれる本質岩片は，暗褐色～暗灰色の玄武岩質安山岩スコリアを主体とし，少量の灰白色安山岩軽石塊を含む．またしばしば両者が混在した縞状軽石が含まれる．大型のスコリア及び軽石塊の内部は周縁部に比べやや発泡度が高く，またしばしば赤色酸化している．ごく少量の安山岩溶岩や熱水変質を被った火山岩片が含まれる．
本層に含まれるスコリア及び軽石の全岩組成はSiO2＝56～60重量％である．暗色のスコリアの全岩組成はこの組成範囲の中でやや苦鉄質側に，白色軽石は珪長質側に分布する．斑晶鉱物は斜長石，単斜輝石，斜方輝石及び少量の磁鉄鉱である．また，斑晶として普通角閃石が少量含まれる．総斑晶量は20体積％前後である．
地質年代
高崎市宮沢町では，本層の直上のローム層中に横川第二テフラ（220ka，中山，1978）が挟在する．矢口ほか（1993），矢口（1999）は，本層に伴う榛名富士見（宮沢1）軽石層は, 阿多鳥浜テフラ（240ka,町田・新井，2003）の直下にあり，四阿蓑原テフラ（矢口・田辺，1990；町田・新井，2003）の直上にあるとした．これらから本層の噴出年代は24万年前頃と考えられる．
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