4.2 新期榛名火山
4.2.3 榛名富士溶岩(Hf)
地層名
榛名富士溶岩ドーム(榛名富士溶岩円頂丘;大島,1986)を構成する溶岩を,本報告では榛名富士溶岩と呼ぶ.
模式地
高崎市榛名湖の榛名富士山頂付近.
層序関係
本層の基底は露出していないため被覆関係は不明であるが,榛名カルデラを埋める白川火砕流堆積物を覆うものと考えられる.榛名富士西麓の榛名湖岸では,本溶岩の表面を姶良Tnテフラ,浅間板鼻褐色軽石群を挟在するローム層が被覆する.
分布
榛名富士(標高1,390m)を中心とする,直径約1kmの溶岩ドームを構成する(第29図).榛名富士溶岩ドームの大きさは最大比高210m,面積1.0km2,体積0.05km3である.榛名湖東岸に榛名富士から張り出した高まりが認められるが,本報告では岩相の類似性からこの部分も含めて榛名富士溶岩ドームとする.
西側の榛名湖西岸から見る.滑らかな山体表面の大部分は崖錐堆積物で覆われている.右端の突出した山は相馬山溶岩ドーム.手前の榛名湖の湖面は部分的に氷結している.
(図幅第6.12図)
岩相・構造
斜方輝石普通角閃石安山岩溶岩及び崖錐堆積物からなる.榛名富士の表面は最大径数mに及ぶ岩塊からなる崖錐堆積物で覆われており,内部を構成する溶岩流本体部の露出はごく限られている.表面を覆う岩塊の大部分は高温酸化を受けて淡赤色を呈するが,内部を構成する溶岩流本体は灰色を呈する.榛名富士溶岩は斑晶量30%程度の斜方輝石普通角閃石安山岩からなる(第30図).含まれる斑晶鉱物は斜方輝石,普通角閃石,斜長石からなり,少量の石英,磁鉄鉱,アパタイトを伴う.
Pl:斜長石,Hb:普通角閃石,Op:斜方輝石,Mt:磁鉄鉱.写真の横幅約2.5mm.GSJ R94146.
(図幅第6.13図)
地質年代
本溶岩の基底は露出していないが,榛名富士北西で掘削された榛名温泉の温泉井では,白川火砕流に相当すると考えられる火砕流堆積物が深度303mまで分布する(榛名町誌編さん委員会,2007).このことから,本溶岩は白川火砕流を覆って分布すると考えられる.また,本溶岩の表面を姶良Tnテフラ,浅間板鼻褐色軽石群を挟在するローム層が被覆する.これらの層序関係から,本溶岩の噴出年代は白川火砕流の噴出(50ka)と,姶良Tn テフラの堆積(29ka)の間であると考えられる.