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Photo of the volcano
プリニー式噴火の序盤 1932/04/10 11:30
作成者: K. Hartmann, ライセンス: Public Domain

キサプ
1916-32年噴火

Quizapu 1916-32 Eruption
  • 発生地域: チリ
  • アンデス南部火山帯(SVZ)
  • 噴火規模: VEI 5
  • ※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による

    4.05 km3 DRE

    最高噴煙高度: 30 km

  • マグマ組成: 安山岩質・デイサイト質
  • 噴火トレンド: エスカレート型
火山の位置(厳密な火口の位置を示すものではない).テフラ等層圧線はHildreth & Drake (1992)を改変.

主要な噴出物等

  • 降下火砕物
  • あり

  • 火砕流
  • あり

  • 溶岩
  • なし

外部リンク:

米スミソニアン博物館 Volcanoes of the World: Azul, Cerro

噴火の全体的な推移

カーソルを合わせると詳細が表示される.火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】

前兆現象・噴火開始

1932年の噴火に先立って,1907年頃から間欠的な水蒸気爆発および小規模なストロンボリ式噴火を行っていた.活動は1916年頃に活発化し毎日起こるようになった.中でも1927年からは29年までは連続噴火状態で毎夜灯台のように輝いたという.活動期間の割にこれらの活動による噴出物は非常に少ない.

1932年に入って,1/25にはやや強い爆発があったとみられる.4/9朝,緑灰色の噴煙とともに鳴動が始まり,午後には噴煙と蒸気は規模を増した.夜間には再び赤い火映に照らされた.4/10午前には引き続き多量の水蒸気を噴き上げていた.

噴火推移

1932年4月10日,11時過ぎに継続時間約18時間のプリニー式噴火が始まった.11:30には噴煙高度16 kmあったとみられている.13時以降風下で降灰が開始し,14時頃からは火山近傍では窓ガラスの連続振動,100 km以遠では広く爆発音が聞こえるようになる.17時以降は240 km離れたサンティアゴでも絶え間ない爆発音がドアや窓を揺らし,21-23時に最高潮を迎えた.噴火は翌11日早朝に弱まったとみられているが,爆発音は昼過ぎまで間欠的に続いた.

噴出物は序盤と終盤に苦鉄質のスコリアが噴出し,中盤の最も多量な部分はデイサイト質マグマのみから構成される複雑な過程をたどった.Higgins et al. (2015)は均質なデイサイト質のマグマだまりに安山岩質マグマが注入されるマグマ供給系を想定し,1846-47年噴火のマグマの残渣の噴出がデイサイト質マグマだまりによる大規模噴火の起因となり,終息時には安山岩質マグマの再充填が起こったと推定した.噴出量は4 km3 DREにおよび,1846-47年噴火の溶岩と合わせるとアンデスでは過去200年間で最も多量のマグマを噴出した火山ということができる.

日付時刻継続時間(h)VUC内容出典
1916年-1写真が撮影される。Quizapuの山容はは現在と同じ。Hildreth & Drake (1992)
1916/01/01約10.0年41916年から1926年まで、間欠的な活動は激化。毎日起こるようになる。Hildreth & Drake (1992)
1926年2火映が初めて目撃されるHildreth & Drake (1992)
1927/11/02約14ヶ月3連続噴火状態になる。噴煙は4km程度。毎夜火映が巨大な灯台のように輝く。Hildreth & Drake (1992)
1928/12/01-1Great Talca Earthquake (Mw 7.6) 前後に噴火活動が一次的に止まったらしいHildreth & Drake (1992)
1929 6月約30ヶ月41929年中盤から再び噴火は間欠的になる。Hildreth & Drake (1992)
1932/01/254105km離れたMalargueの観察者: a black "pine-tree" cloudHildreth & Drake (1992)
1932/04/014Laguna Invernadaの警察官回想: 4月の初週、噴煙がいつもより大きかったHildreth & Drake (1992)
1932/04/09 07時頃2朝、緑灰色の噴煙。牛の鳴くような鳴動を始めた。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/09 19時頃3噴煙と蒸気は規模を増し、夜間には赤い火映に照らされたHildreth & Drake (1992)
1932/04/10 00時頃2巨大な水蒸気の雲。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 10時頃約18時間6このころプリニー式噴火の開始。水蒸気の雲は暗色に転じる。アルゼンチン側では爆発音がたびたび聴こえる。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 11:305Talca (85 km WNW)での詳細不明な計測によると噴煙高度16 kmHildreth & Drake (1992)
1932/04/10 13:004Puesto El Tristan (47 km ENE)で降灰開始。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 14:005火山近傍では窓ガラスの連続震動、100 km以遠ではチリ側でも間欠的な爆発音Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 16:005Puesto El Tristan (47 km ENE)で砂と火山豆石が降下。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 16:006写真が撮影される。噴煙高度30 km程度。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 17:006Santiago (240 km N)で爆発音がドアや窓を間断なく揺らし続ける。地震に関する言及が少ないのは激しい空振のためか?Hildreth & Drake (1992)
1932/04/10 19:00約10時間5夜間、噴煙は火映と絶え間ない火山雷に照らされ続けるHildreth & Drake (1992)
1932/04/10 21:00約2.0時間6Santiagoで聞こえる爆発音が最高潮に達するHildreth & Drake (1992)
1932/04/11 05:004プリニー式噴火がこの頃終了か。間欠的な爆発音は継続。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/11約10日間411日以降爆発音は聴こえなくなる。水蒸気爆発や小規模なスコリアの噴出が継続。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/212チリ大学のチームがQuizapuに到達。激しい噴気活動。Hildreth & Drake (1992)
1932/04/23-1隣接するDescabezado Grandeの山腹から白煙が上がり、噴気活動が始まる。Hildreth & Drake (1992)
1932/06/01-1Descabezado Grandeで水蒸気爆発が始まり、クレーターを形成。1年ほど続く。Hildreth & Drake (1992)
噴火推移のイベント一覧.時間は全て現地時刻.

長期的活動推移

Cerro Azul火山はアンデス南部火山帯に位置する成層火山であり,51-69% SiO2という非常に多様なマグマ組成のアグルーチネートを主な構成物としている.歴史時代に噴火は知られていない.Quizapu(キサプ; 誰も知らないの意)はCerro Azul火山の山腹に位置する火口であり,1846-47年噴火により形成され,後に1916-32年の噴火の給源ともなった.1846-47年噴火の一次記録としてはDomeikyo (1903)が本人の観察や収集した証言をまとめた.この噴火は爆発的噴火活動を殆ど伴わず,~5 km3のデイサイト質溶岩を噴出し (Hildreth and Drake, 1992),その中には1-10%と多量の安山岩質の暗色包有物が含まれていた(Ruprecht and Bachmann, 2010; Ruprecht et al. 2012; Higgins et al. 2015).1932年の噴火は25年にわたる小規模で間欠的な水蒸気爆発と弱いストロンボリ式噴火の後に発生した爆発的大規模噴火であり,約4 km3 DREの噴出物を放出した.

引用文献

Higgins, M.D., Voos, S., Vander Auwera, J., 2015. Magmatic processes under Quizapu volcano, Chile, identified from geochemical and textural studies. Contrib. Mineral. Petrol. 170, 51. http://dx.doi.org/10.1007/s00410-015-1209-5

Hildreth, W., Drake, R.E., 1992. Volcán Quizapu, Chilean Andes. Bull. Volcanol. 54, 93–125. https://doi.org/10.1007/BF00278002

Ruprecht, P., Bachmann, O., 2010. Pre-eruptive reheating during magma mixing at Quizapu volcano and the implications for the explosiveness of silicic arc volcanoes. Geology 38, 919–922. https://doi.org/10.1130/G31110.1

Ruprecht, P., Bergantz, G.W., Cooper, K.M., Hildreth, W., 2012. The Crustal Magma Storage System of Volcán Quizapu, Chile, and the Effects of Magma Mixing on Magma Diversity. J. Petrol. 53, 801–840. https://doi.org/10.1093/petrology/egs002

VolcanoChile. Volcán Quizapu, 1932: Una de las mayores erupciones del siglo XX [WWW Document]. URL https://www.volcanochile.com/joomla30/index.php/contenidos/12-educacion/17-volcan-quizapu-1932-una-de-las-mayores-erupciones-del-siglo-xx (accessed 10.19.20).