福徳岡ノ場
2021年噴火
- 発生地域: 日本 伊豆小笠原弧
- 噴火規模: VEI 4
- マグマ組成: トラカイト質
- 噴火トレンド: 減衰型
※VEIは暫定値
約0.1 km3 (漂流軽石+新島) + ? km3 (降下火砕物)
最高噴煙高度: 17 km
61-62% SiO2
主要な噴出物等
- 降下火砕物
- 火砕流
- その他
あり
あり
火砕物により新島が形成された
産総研リンク:
前兆現象・噴火開始
防災科研Hinet自動震源には噴火開始24時間以内に地震活動は記録されていない.噴火の8日前,2021年8月5日に海上保安庁の観測機からは弱い海水変色が確認されていた.なお海水変色は1972年以来恒常的に見られている.
噴火推移
2021年8月13日午前6時頃,ひまわり8号が西に流される白色の連続噴煙を捉え始めた.海上にいた漁師により白色噴煙柱が目撃・撮影されている.9:13には既に漂流する軽石がSentine-3衛星写真に写っている.9:57にVAAC Tokyoが噴煙高度16.5 kmに達するとの情報を発出.当時の圏界面は高度16 kmであったとみられるが,11:41には既に圏界面からオーバーシュートしたとみられる形状の噴煙が父島で目撃されている.Fauria et al. (2022)によると,10:22にMaxar社WorldView-2衛星により旺盛な白色噴煙およびその根元で軽石筏の形成が進んでいる様子が撮影されている.14時頃から1時間程度急速に同心円状の笠雲が発達し,その後日没まで西に流された液滴状の形態を取る.15:00-15:30に行われた海上保安庁の航空観測では,噴火が激しく接近できなかったものの,大きくオーバーシュートした噴煙柱の中では激しいプリュームと弾道放出活動が起こっており,部分的崩壊に伴うサージの発生もみられた.日没後も硫黄島および父島からは激しい火山雷活動が目撃された.21:25にSentine-3衛星に撮影された赤外画像では,同心円状の噴煙は消失し,西に流される連続噴煙状態へ戻っていた.翌14日7:30以降,連続噴煙は間欠的な噴煙放出へと変化した.9:50には雲と噴煙の合間から,Planet社Planetscope衛星が新島が形成されている様子を撮影している.夕方に再び連続噴煙状態になるが15日朝には再び間欠的な噴煙放出に戻り,昼頃に衛星から見える規模の噴煙および軽石いかだの放出は完全に停止した.12:51には海上保安庁の航空機が小規模なスルツェイ式噴火活動を行っている様子を撮影しているが,その後終息したものとみられる.軽石いかだは黒潮反流により西に向けて漂流し,9月末から10月にかけて沖縄および奄美諸島に漂着して船舶の航行や養殖業に大きな被害をもたらした.その後黒潮に乗った軽石より11月には関東でも微量の漂着がみとめられたほか,台湾・フィリピン・タイなどにも相当量が順次漂着した(Yoshida et al. 2022a).福徳岡ノ場の火口周辺に形成された新島は,侵食の影響により12月ごろ海没した.翌2022年前半には引き続きひまわり衛星でも確認可能な広範な海水変色がみられたが,後半にはそれもみられなくなった.この噴火で噴出した軽石は61-62% SiO2のトラカイト質であった(Yoshida et al. 2022b).
日付時刻 | 継続時間(h) | VUC | 内容 | 出典 |
---|---|---|---|---|
2021/08/13 06:00 | 約7.5時間 | 5 | ひまわり8号が西に流される連続噴煙を観測する。 | ひまわり8号起動観測 |
2021/08/13 06:30 | 5 | 数十km離れた漁師がやや傾いた白色噴煙柱を撮影 | 小杉 (2021) https://www.youtube.com/watch?v=Wk3lnp7b4eQ | |
2021/08/13 09:13 | 5 | Sentinel-3衛星 点噴出源から西に流される噴煙と軽石 | SentinelHub EOBrowser | |
2021/08/13 09:27 | 6 | VAAC 噴煙高度FL540=16.5 km | VAAC Tokyo | |
2021/08/13 10:00 | 約60分間 | 6 | WWLINのGlobal Volcanic Lightning Monitorに記録される火山雷の数がピーク(800回/時)を迎える。以降翌14日9時台にゼロになるまで徐々に減少。 | https://twitter.com/geoign/status/1426496904288899073 |
2021/08/13 11:41 | 6 | オーバーシュートした噴煙が父島で目撃される | https://twitter.com/teeeec_Official/status/1426011000013168643 | |
2021/08/13 13:30 | 約6.5時間 | 6 | 同心円状に広がる笠雲が発達する | ひまわり8号 |
2021/08/13 15:00 | 約60分間 | 6 | 海保航空観測 オーバーシュートした噴煙、vigorous convective plumes、弾道放出物、サージ | 海上保安庁海域火山データベース |
2021/08/13 15:30 | 6 | 距離30 kmから漁師が明灰色の噴煙柱と白色の笠雲を撮影。火山雷多数。 | https://twitter.com/yutaka_kosugi/status/1427594160626753536 | |
2021/08/13 15:30 | 6 | 気象庁 解説情報 噴煙16 km | https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/tokyo/21m08/202108131330_331.pdf | |
2021/08/13 15:12 | 2 | Sentinel-5 TROPOMI SO2 6.5kt | https://twitter.com/DlrSo2/status/1426104182763839488 | |
2021/08/13 17:00 | 5 | 17時ごろ? 硫黄島から噴煙柱の根本が目撃される | https://twitter.com/tetsu_yan/status/1426096964098166784 | |
2021/08/13 17:57 | 6 | 大きくオーバーシュートした噴煙が父島で目撃 | https://twitter.com/teeeec_Official/status/1426105624446730241 | |
2021/08/13 18:45 | 5 | 激しい火山雷活動が父島で目撃 | https://twitter.com/teeeec_Official/status/1426117586077380610 | |
2021/08/13 20:00 | 約4.0時間 | 4 | 噴煙活動が一時的に間欠的に | ひまわり8号 |
2021/08/13 21:00 | 5 | 21時ごろ撮影。激しい火山雷活動が父島で目撃 | https://twitter.com/misoka_fumituki/status/1426179455018405888 | |
2021/08/14 00:00 | 約8.0時間 | 5 | 噴煙活動は再び連続的に | ひまわり8号 |
2021/08/14 07:00 | 5 | 7時過ぎ。引き続き父島から噴煙目撃。オーバーシュート部分はない? | https://twitter.com/uemurakazuhiko/status/1426313926132736002 | |
2021/08/14 08:00 | 約7.5時間 | 4 | 連続噴煙途切れ、以降間欠的に雲を吐き出す | ひまわり8号 |
2021/08/14 09:49 | 4 | Sentinel-3 SLSTR 間欠的な噴煙の一つが給源にかかっている | SentinelHub EOBrowser | |
2021/08/14 | 3 | アクセルスペース社衛星写真。13日の軽石ラフトが離れる一方、火口ラグーン内にも軽石ラフトが浮いている。噴出継続中? | https://newsdigest.jp/news/9464c248-7bd5-4299-b092-8d1c90c4b819 | |
2021/08/14 15:30 | 約4.5時間 | 4 | 再び連続噴煙状態に | ひまわり8号 |
2021/08/14 20:00 | 約20時間 | 4 | 再び噴煙が間欠的になる。15日昼頃に終息。 | ひまわり8号 |
2021/08/15 12:40 | 約60分間 | 4 | 海保が航空観察により写真および動画を撮影。ラグーン内に白い噴気活動のち暗色ジェットを吹き出すマグマ水蒸気爆発と白色サージ発生。 | https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo24-2.htm |
2021/08/15 13:00 | 3 | Planetlab社衛星写真。火口ラグーン内の軽石ラフトが外界に出ようとする様子が撮影される。この頃軽石ラフトの噴出終わり? | https://twitter.com/planet/status/1427225722813394952 | |
2021/08/16 13:48 | 約82分間 | 1 | 海保が航空観察により写真及び動画を撮影。ラグーン内に白い噴気。軽石ラフトはすでに離れる。数kmに伸びる海水変色。 | https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo24-2.htm |
2021/08/16 | 1 | アクセルスペース社衛星写真。軽石ラフトが完全に福徳岡ノ場を離れる。海流に流されたなびく数kmの海水変色。 | https://newsdigest.jp/news/9464c248-7bd5-4299-b092-8d1c90c4b819 | |
2021/08/17 10:00 | 1 | Landsat-8衛星写真。静穏。海水変色はラグーン周辺のみ。 | https://glovis.usgs.gov/scene/view/landsat_8_c1/LC81040432021229LGN00/ |
長期的活動推移
福徳岡ノ場は伊豆小笠原弧の南端,マリアナ弧に接続する部分に位置する安山岩質の海底火山であり,北福徳カルデラと呼ばれる15×7 kmの凹地の南部に位置している.凹地からの比高は400 mほどであり,山頂部の水深はたびたび変化しているが2010年の海上保安庁の測量で-25 mであった.記録のある20世紀以降たびたび噴火を繰り返しており,1904, 1914, 1986年に新島を形成したがいずれも海没している.
引用文献
Fauria, K., Jutzeler, M., Mittal, T., Gupta, A., Kelly, L., Rausch, J., Bennartz, R., Delbridge, B., & Retailleau, L. (n.d.). Simultaneous creation of a large vapor plume and pumice raft by a shallow submarine eruption. In Earth and Space Science Open Archive. Retrieved February 10, 2022, from https://www.essoar.org/doi/10.1002/essoar.10510412.1
Yoshida, K., Tamura, Y., Sato, T., Hanyu, T., Usui, Y., Chang, Q., Ono, S., 2022. Variety of the drift pumice clasts from the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Japan. Island Arc 31, e12441. https://doi.org/10.1111/iar.12441
Yoshida, K., Tamura, Y., Sato, T., Sangmanee, C., Puttapreecha, R., Ono, S., 2022. Voyage to the west: pumice raft from the Fukutoku-Oka-no-Ba in the northwest Pacific drifted over the South China Sea to Thailand. EarthArXiv. https://doi.org/10.31223/x5pp9x
Global Volcanism Program, 2021. Report on Fukutoku-Oka-no-Ba (Japan) (Bennis, K.L., and Venzke, E., eds.). Bulletin of the Global Volcanism Network, 46:11. Smithsonian Institution. https://volcano.si.edu/showreport.cfm?doi=10.5479/si.GVP.BGVN202111-284130