
作成・引用: Michael Ryan (US Geological Survey), ライセンス: CC BY-NC-ND 4.0
アスキャ
1875年噴火
- 発生地域: アイスランド アイスランド北部火山帯(NVZ)
- 噴火規模: VEI 5
- マグマ組成: 流紋岩
- 噴火トレンド: エスカレート型
※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による
1.8-2.8 km3 bulk
最高噴煙高度: 26 km
噴火の全体的な推移
カーソルを合わせると詳細が表示される.火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】.
前兆現象・噴火開始
1872年4月にはアイスランド東リフトゾーン北部で激しい地震が発生した.マグニチュードは6ないし7に達した.この地震はおそらく,アイスランドリフトゾーン北端と,アイスランド北方沖に続くKolbeinsey海嶺をつなぐトランスフォーム断層であるTjprnes断層帯の変位によるものである.
1874年2月にはアスキアから激しい水蒸気の噴出が記録されている.1974年秋にはアスキアから南に50~70㎞離れたSveinagja地域に新たな地割れが発生した.12月中旬にリフトゾーン北部で地震活動が活発化し,未確認の記録ながらVatnajokull地域で噴火活動が報告されている.クリスマスから新年にかけて地震活動は地震回数および強度とも増大し,アイスランド北部で広く有感となった
噴火推移
噴火は1875年1月1日及び2日に開始し,アスキア地域で噴煙の上昇がみられた.Myvatn地域においては1月3日に地震活動の強度及び頻度が最大となり,8日まで継続した.地震活動はその後2か月半にわたって断続的にみられた.
1月3日未明直前に発生し,アスキア上に火柱が目撃された.2回目の噴火はアスキア南部から発生した.黒色の火山灰や変質パラゴナイト火山灰が降下した.
2月16日には,アスキアカルデラ南東縁に開口した火口が活動しているのが目撃されている.活動がマグマ噴火か水蒸気噴火かははっきりしない.火口の西側200mの領域では35000m2の広さが約10m陥没しているのが目撃された.陥没地域の北西には小さな池が形成された.陥没領域の南部では二つ目の火口が活動しており小規模な溶岩流がみられた.三つめの小さな火口が陥没領域の西側に開口していた.
2月18日には,アスキアの南方70㎞でSveinagja割れ目噴火が開始した.割れ目噴火は延長2~5㎞の割れ目から発生した.2月25日に活動は衰退するまで,106m3の玄武岩質溶岩が噴出した.3月10日にはSveinagjaの北1.5㎞で割れ目噴火が再開した.3月23日には噴火割れ目北部で噴火活動が活発化し,40か所から溶岩噴泉が噴出した.その後,Sveinagja割れ目噴火は一時的に衰退した.
3月28日にはアスキアにおけるクライマックス噴火が開始した.3月28日21時ごろ黒煙がアスキア上に上昇した.その後3月29日3時30分アスキアから50㎞東方で,雷をともなう小規模な降灰が1時間継続.灰色細粒で粘着質の火山灰が降下した.ついで6時30分から軽石の降下がアスキアの東方の広範囲にわたって発生.激しい軽石の降下により周囲が真っ暗になった.12時ごろに軽石の降下が終了した.その後,アスキアでは小規模な爆発噴火が5日から7日の間隔を置いて発生し,4月末まで継続した.4月4日にはSveinagja割れ目噴火が再開し,11日まで断続的に噴火した.小規模な活動が7月1日及び13日に記録されている. 8月15日には広範囲において地震が感じられた.それまで休止していたSveinagja噴火割れ目は8月15日から噴火再開し,噴火割れ目南部の20か所から溶岩噴泉が噴出した.
1874年から75年にかけての火山テクトニック活動によってOskjuvatnカルデラが形成された.W.L.Wattsの観察によれば,1875年7月にはカルデラは3~4㎞2の領域で深さは120~150mであった.G.Carocの1876年の調査では,カルデラの領域は7㎞2に拡大し,深さは232mであった.今日,カルデラの領域は11㎞2で,カルデラ北側リムはカルデラ湖から50mの高さがあり,最大水深は217mである.
日付時刻 | 継続時間(h) | VUC | 内容 | 出典 |
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1874 9月 | 2 | 南に50 km離れたSveinagjaで地割れが発生 | 既製のの噴火推移概要 | |
1874/12/15 | 2 | リフトゾーン北部で地震活動が活発化。Vatnajokullで噴火があった? | 既製のの噴火推移概要 | |
1874/12/24 | 約7.0日間 | 2 | 地震活動の増大。アイスランド北部で広く有感。 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/01/01 | 約48時間 | 4 | Askjaから噴煙があがっているのが目撃 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/01/03 | 2 | 地震活動のピーク | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/01/03 04時頃 | 5 | 未明にAskjaに火柱が目撃された。火山灰が降下。 | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/02/16 | 3 | Askjaから噴煙があがっているのが目撃南東縁に開口した火口が目撃。火口の西側200mでは3.5ヘクタールが10m陥没。陥没領域の南部では別の火口があり小規模な溶岩流がみられた | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/02/18 | 約8.0日間 | 3 | Askja南方70kmでSveinagja割れ目噴火。2-5 kmの割れ目から10^6 m3の溶岩が流出。 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/03/10 | 3 | Sveinagja北1.5kmで割れ目噴火。23日にピーク。 | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/03/28 21時頃 | 約15時間 | 4 | Askjaから黒煙が上昇。クライマックス噴火の開始。 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/03/29 03:30 | 5 | Askjaの50 km東方で降下火山灰 | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/03/29 06:30 | 約5.0時間 | 6 | Askja東方で激しい効果軽石。ブラックアウト。12時ごろに終了。 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/04/01 | 約30日間 | 4 | 日時不詳。小規模な爆発が5-7日の間隔をおいて発生した。 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/04/04 | 約7.0日間 | 3 | Sveinagja割れ目噴火の再活動 | 既製のの噴火推移概要 |
1875/07/01 | 4 | Askjaで小爆発 | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/07/07 | 4 | Askjaで小爆発 | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/08/15 | 2 | 有感地震 | 既製のの噴火推移概要 | |
1875/08/15 | 3 | Sveinagja割れ目噴火の再活動 期間不詳 | 既製のの噴火推移概要 |
長期的活動推移
アスキアはDyngjufjöll山地を構成する大型の玄武岩質中央火山で,重複した3つのカルデラによって切断されている.約1万年前にDyngjufjöllから発生した流紋岩マグマによる爆発的噴火がアスキアカルデラの形成にかかわったと考えられる.多数の後氷期の割れ目噴火が環状割れ目に沿って発生している.また,延長100kmにおよぶアスキア割れ目噴火群もまたアスキア火山システムに属すると考えられる.1875年噴火以前の火山活動の詳細については不明である.
引用文献
Carey, R.J., Houghton, B.F., Thordarson, T., 2010. Tephra dispersal and eruption dynamics of wet and dry phases of the 1875 eruption of Askja Volcano, Iceland. Bull. Volcanol. 72, 259–278. https://doi.org/10.1007/s00445-009-0317-3
Hartley, M.E., Thordarson, T., 2012. Formation of Öskjuvatn caldera at Askja, North Iceland: Mechanism of caldera collapse and implications for the lateral flow hypothesis. J. Volcanol. Geotherm. Res. 227–228, 85–101. https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2012.02.009
Sparks, R.S.J., Wilson, L., Sigurdsson, H., 1981. The Pyroclastic Deposits of the 1875 Eruption of Askja, Iceland. Philos. Trans. R. Soc. Lond. A 299, 241–273. https://doi.org/10.1098/rsta.1981.0023