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Photo of the volcano
西方100 kmから撮られたプリニー式噴火の噴煙柱.
作成・引用: I. V. Yerov, ライセンス: CC BY-NC-ND 4.0

ベズィミアニィ
1955-56年噴火

Bezymianny 1955-56 Eruption
  • 発生地域: ロシア
  • カムチャッカ半島
  • 噴火規模: VEI 5
  • ※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による

    0.5 km3 崩壊物質 + 0.2-0.4 km3 サージ堆積物 + 0.2-0.3 km3 降下火砕物 + 0.5 km3 火砕流堆積物

    最高噴煙高度: 34-36 km

  • マグマ組成: 安山岩
  • 57-59%

  • 噴火トレンド: 減衰型
100 km
火山の位置(厳密な火口の位置を示すものではない).

主要な噴出物等

  • 降下火砕物
  • あり

  • 火砕流
  • あり

  • 溶岩
  • 前駆的活動時および噴火終息後に溶岩ドームの形成

  • その他
  • 山体崩壊

外部リンク:

米スミソニアン博物館 Volcanoes of the World: Bezymianny

噴火の全体的な推移

Sep 1955Nov 1955Jan 1956Mar 1956May 1956Jul 1956Sep 1956Nov 1956Jan 19570246Oct 1955Nov 1955Dec 1955Jan 1956Feb 1956Mar 1956Apr 19560246
ベズィミアニィ 1955-56年噴火 全体 (510日間を表示)点線範囲・主要部 (200日間を表示)

カーソルを合わせると詳細が表示される.火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】

前兆現象・噴火開始

噴火活動推移はGorshkov (1959)に詳細に記載されている.1955年噴火以前に歴史時代の噴火記録はない.噴火前の山体は円錐形で3085 mの標高があった.1955年9月29日,最初の地震が観測された.地震の回数と強度は徐々に増し10月22日の噴火を迎えた (Gorshkov, 1959).

噴火推移

1955年10月22日 06:30,新しい火口が形成され白色噴煙,続いて弱い火山灰の放出が始まった.間欠的な爆発は10月26日以降強度を増し,当初は周囲40–60 kmで,11月に入ってからは120 km以上離れた地域でも降灰がみられるようになった.地震活動は11月10日に470回/日のピークを迎え,それ以降は減少するが,噴火活動は激化し11月16–20日に最初のピークを迎える.45 km離れたKliuchiでは11月17日の降灰は1日中灯火が必要なほどで,数日の間に16.6 mmの灰が積もった.11月末以降噴火強度は徐々に,地震活動は11月25日に大幅に低下した.後の1956年1月25日に航空機から観察された溶岩ドームはこの頃形成を開始したと推測されている.2月初旬に十数km離れた地点から観察が行われ,小爆発と赤熱物質による火砕流発生を繰り返していること,また山体南東側が100 m以上隆起して急峻な斜面を作っている様子が記録された (Gorshkov, 1959).

1956年3月30日 17:11,地震とともに山体南東側が山体崩壊を起こし,上方と側方にそれぞれ漏斗型の噴煙が立ち昇るのが目撃された.Ust-Kamchatskで撮影された写真の噴煙柱高度は34–36 kmあった.Kliuchiでは自分の手も見えないほどの降灰があり,2 cm以上積もった.直径1.5 kmの東向きの馬蹄形の崩壊地形が形成され,内部ではその後1956年いっぱいかけて2つの比高300 mの溶岩ドームが形成され噴火は一旦終息した (Gorshkov, 1959).その後現在に至るまで数年以上間を開けることなくドームの形成と爆発的噴火による崩壊を繰り返している (Girina, O.A., 2013).

Belousov (1996)は山体崩壊の体積を0.5 km3,ブラストに伴うサージ堆積物を0.2–0.4 km3,崩壊に伴って起こったプリニー式噴火の降下火砕物を0.2–0.3 km3,火砕流堆積物を0.5 km3とした.噴出物は57–59% SiO2の安山岩であった.

日付時刻継続時間(h)VUC内容出典
1955/09/291最初の地震がKliuchi(距離45 km)で観測される。Gorshkov (1959)
1955/10/091地震の数が数十回/日に達するGorshkov (1959)
1955/10/111初めて震源がベズィミアニィ付近深さ50 kmに求まるGorshkov (1959)
1955/10/122地震の数が100-200回/日に達する。一部有感。Gorshkov (1959)
1955/10/22 06:30約96時間4白い煙、続いて火山灰の放出が開始。噴煙高度は新しい火口から1-2 km程度。Gorshkov (1959)
1955/10/26約14時間4噴出物の増加。周囲40-60 kmで降灰が見られるように。Kliuchiでは11/9までに6 mmないし3.5 kg/m2の灰が積もった。近傍のCamp 1と2(12 km)付近では厚さ3-4 cmに達した。Gorshkov (1959)
1955/11/01約2.0時間5Kliuchiでは道路工事が停止するほどの降灰。120-130 km離れた地域にも弱い降灰。Gorshkov (1959)
1955/11/07 07:00511/7朝。12 km離れたキャンプ2では轟音と爆発音、揺れが聞こえ10 mmの降灰。Gorshkov (1959)
1955/11/102地震活動のピーク。470回/日Gorshkov (1959)
1955/11/135噴煙は火口から5 km。一晩中激しい火山雷。太平洋に降灰。Gorshkov (1959)
1955/11/145噴煙は火口から7.5 km、高度10.5 kmに達した。Gorshkov (1959)
1955/11/16約96時間516-20日までKliuchiで激しい降灰。21日の測定でこの間の降灰は厚さが16.6 mmないし10.9 kg/m3。70%が16-17日の24時間で降った。250 km北方まで降灰。火口が700-800 m径に巨大化。Gorshkov (1959)
1955/11/175降灰により1日中灯火が必要な薄暮ほどの明るさ。150-200 m先の灯火が見えないことも。Gorshkov (1959)
1955/11/20約41日間411月末―12月末、噴火強度は徐々に低下。Gorshkov (1959)
1955/11/251地震活動の急な低下。24日(303回)、25日(100回)Gorshkov (1959)
1956/01/01約88日間4弱い活動度に戻る。噴煙は1-1.5 kmを超えず、50-60 km範囲の降灰はあるがずっと弱い。Kliuchiでの降灰量は10-20 g/m2と桁で小さくなった。白い噴気を上げていることも。Gorshkov (1959)
1956/01/253初めて航空観察が行われ溶岩の噴出が確認される。11月から噴出開始していたか?Gorshkov (1959)
1956/02/01約8.0日間42月初旬、キャンプ1と2から間欠的な爆発と火砕流の発生が観察される。大きめの爆発は噴煙2-3 kmに達する。火山体南東側が以前より100 m隆起しており斜面も30°以上に急峻に変化。Gorshkov (1959)
1956/03/30 17:117大きな地震、気圧の変化。65 km離れたKamakiでベズィミアニィから東方へ斜めの噴煙が立ち上がるのが目撃。Kozyrevskでは上方に35 km、側方に6-8 kmの漏斗型の噴煙が広がるのが目撃。Ust-Kamchatskで撮影された写真の噴煙柱高度は34-36 kmと推定。Gorshkov (1959)
1956/03/30 17:40約40分間717:40-18:20、Kliuchiで自分の手も見えないほどの激しい降灰。Gorshkov (1959)
1956/03/30 18:20約2.7時間4Kliuchiでその後降灰は21時まで続いた。厚さ2 cm、24.5 kg/m2。Gorshkov (1959)
1956/03/31約91日間4クライマックス噴火後、小爆発と火砕流を伴いながら馬蹄形カルデラ内での溶岩ドームの再生。7月初旬までに拡大は終了。比高約300 m。Gorshkov (1959)
1956/04/01約61日間24月から5月にかけて、地震活動がやや上昇。300回/日程度。溶岩ドーム再生に伴うものか?Gorshkov (1959)
1956/06/215やや大きめの爆発。噴煙は火口から8 kmに達した。Gorshkov (1959)
1956/06/301地震活動ほぼ終了。1回/日程度。非常に弱い地震活動は年末まで続いた。Gorshkov (1959)
1956/08/274弱い爆発は続き、溶岩の内部は赤熱していたGorshkov (1959)
1956/10/20310月末、航空観察から火口南西側にもう1つの溶岩ドーム形成を確認。後の計測でこの溶岩ドームは比高260 mに達した。Gorshkov (1959)
1956/12/01012月までに活動終了。溶岩ドームは頂上を除いて雪に完全に覆われた。噴気活動は続いた。Gorshkov (1959)
噴火推移のイベント一覧.時間は全て現地時刻.

長期的活動推移

ベズィミアニィ火山は4500 14C yr BPに山体の形成を開始した若い安山岩質の成層火山である (Braitseva et al., 1997).

180018501900195020002050210021500246
ベズィミアニィ 1955-56年噴火 長期的活動推移 (前後200年間を表示)

引用文献

Belousov, A. (1996) Deposits of the 30 March 1956 Directed Blast at Bezymianny Volcano, Kamchatka, Russia. Bull. Volcanol., 57, 649–662. https://doi.org/10.1007/s004450050118

Braitseva, O.A., Ponomareva, V.V., Sulerzhitsky, L.D., Melekestsev, I.V. and Bailey, J. (1997) Holocene Key-Marker Tephra Layers in Kamchatka, Russia. Quaternary Research, 47, 125–39. https://doi.org/10.1006/qres.1996.1876

Girina, O.A. (2013) Chronology of Bezymianny Volcano Activity, 1956–2010. J. Volcanol. Geotherm. Res., 263 (August): 22–41. https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2013.05.002

Gorshkov, G.S. (1959) Gigantic Eruption of the Volcano Bezymianny. Bull. Volcanol., 20, 77–109. https://doi.org/10.1007/BF02596572.