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Photo of the volcano
山体崩壊後，島は火口湖をもつ火砕丘となった．2019/01/11撮影．
作成・引用: James Reynolds, ライセンス: 禁転載．All rights reserved.

クラカタウ
2018年噴火

Krakatau 2018 Eruption
  • 発生地域: インドネシア
    • スンダ海峡
  • 噴火規模: VEI 3

    • ※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による

    >0.0983 km3 DRE

    最高噴煙高度: 16 km

  • マグマ組成: 安山岩
  • 噴火トレンド: エスカレート型
火山の位置(厳密な火口の位置を示すものではない)．

主要な噴出物等

  • 降下火砕物

    • あり

  • 火砕流

    • あり

  • 溶岩

    • あり

外部リンク:

米スミソニアン博物館 Volcanoes of the World: Krakatau

噴火の全体的な推移

カーソルを合わせると詳細が表示される．火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】．

前兆現象・噴火開始

1883年の噴火以降形成された新島であるAnak Krakatauは，少なくとも数年に一度，VEI1〜2程度の噴火を繰り返している．2018年噴火の直近では2014年に噴煙が高度3 kmまで上昇した噴火が記録されている．また，2017年には山頂火口において溶岩ドームの形成を伴う噴火が発生している (Global Volcanism Program, 2015)．

噴火推移

2018年6月18日に火山性地震が増加し一連の噴火が開始した．現地の機関により，噴火の様子は細かく記録された．当初は噴煙高度数百メートル程度の小さな噴火を繰り返していたが，高度が数キロメートルに達するやや規模の大きい噴火が徐々に増加していった (Global Volcanism Program, 2018)．次第に活動はエスカレートし，現地時間12月22日 21時台に山体崩壊とそれに伴う津波が発生した (Perttu et al., 2020)．その後も活動は継続し，現地時間12月28日早朝に一旦終息した．山体崩壊により，Anak Krakatauは島全体が大きく崩壊し，標高は338 mから110 mとなった．山体崩壊後は浅瀬でのスルツェイ式噴火が発生し，2019年1月まで継続した．これにより，崩壊した島が再び成長し，新たな火口が出現した (Global Volcanism Program, 2019c)．

日付時刻継続時間(h)VUC内容出典
2018/06/18約72時間2一連の活動の開始．火山性地震が増加．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/06/213山頂から100-200 mの高さまで噴煙が上がり，降灰．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/06/25 07:143約1 kmの噴煙が上がり，北に流れた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/06/27約7.0日間3山頂から100 m程度の噴煙が上がっていた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/01 21:00約6.0時間3夜間に山頂からの白熱光が観測されたSmithsonian GVP Eruptive History
2018/07/04 05:22330~40秒続いたが，悪天候のため噴煙の高さは推定できず．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/05 14:09330~40秒続き，噴煙は300~500 mまで上昇，北北西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/05 14:25330~40秒続き，噴煙は300~500 mまで上昇，北北西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/05 16:51330~40秒続き，噴煙は300~500 mまで上昇，北北西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/15 17:223噴煙が700 m上昇し，北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/16 16:51344秒間続き，噴煙は500 mまで上昇して北に漂った．破裂音と振動が確認された．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/18約48時間4噴煙が高度1.5 kmに達し，北東・北・南西・西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/07/25約24時間4噴煙が高度1.2 kmに達し，南西・北西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/02約24時間3複数の地震が観測され，噴煙が300 mまで上昇し，北に流れた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/02 17:573黒い噴煙が200 mまで上昇し，北に流れた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/05約48時間3濃い灰色の噴煙が200-600 mまで上昇し，夜間には山頂の発光が確認された．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/11 12:004噴煙が高度1.2 kmまで上昇し，西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/23 18:073地震が発生し，黒色の濃い噴煙が700 mまで上がった．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/27約24時間4噴煙が高度1.2~1.5 kmまで上昇し，南西・西南西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/08/30約24時間4噴煙が高度1.2~1.5 kmまで上昇し，南西・西・北西・北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/09/01約33日間4ストロンボリ式噴火が続き，噴煙は数百 m~数 km程度まで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/09/08 12:004噴煙が高度4.9~5.5 kmまで上昇し，西北西に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/09/22 12:004噴煙が高度2.5 kmまで上昇し，噴出物はほとんどが火口から1 km以内に着弾した．溶岩流は南南西方向で海まで到達した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/10/17約48時間4噴煙が高度1.5~2.4 kmまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/10/24約96時間4噴煙が高度0.9~2.1 kmまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/06 02:23337秒間の地震が発生し，噴煙が500 mまで上がった．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/06 10:003濃い噴煙が600 mまで上がり，北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/09 16:20約60分間342~55秒間の噴火が4回発生し，噴煙が300~600 mまで上がり，北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/10 09:393噴煙が500 mまで上がり，北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/12 10:29約6.5時間338~117秒間の噴火が10回発生し，噴煙が200~700 mまで上がり，北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/13 05:46約3.0時間344~175秒間の噴火が4回発生し，噴煙が800 mまで上がった．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/14 08:40約22時間333~175秒間の噴火が7回発生し，噴煙が300~1000 mまで上がった．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/16 05:243212秒間の噴火が発生し，噴煙が600 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/16 05:323207秒間の噴火が発生し，噴煙が300 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/24 06:11330~42秒間の噴火が発生し，噴煙が300~600 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/25 08:10330~42秒間の噴火が発生し，噴煙が300~600 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/26 09:00330~42秒間の噴火が発生し，噴煙が300~600 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/11/26 10:37330~42秒間の噴火が発生し，濃い噴煙が300~600 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/01 11:31346~69秒間の噴火が発生し，噴煙が500~700 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/02 14:08346~69秒間の噴火が発生し，噴煙が500~700 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/03 08:16346~69秒間の噴火が発生し，噴煙が500~700 mまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/07 07:113噴火が発生した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/09 10:503噴火が発生した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/10 14:133噴火が発生した．濃い黒色の噴煙が700 mまで上昇し，北に漂った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/14 14:45348秒間の噴火が発生し，濃い黒色の噴煙が200 mまで上昇し，北東に流れた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/18 18:233噴火が発生し，300 mの噴煙が東に流れた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/22 14:29約6.5時間4断続的なストロンボリ式噴火，大砲のような音が壁や窓を揺らした．Smithsonian GVP Eruptive History, Perttu et al. (2020)
2018/12/22 17:004噴煙中の高さが増し，噴火音も頻繁になった．南側の海岸には白い蒸気が立ち上った．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/22 18:004この時間までに，噴出した溶岩が海と接触した．Perttu et al. (2020)
2018/12/22 18:304噴火活動のピーク．噴火音が大きくなり，海洋からの蒸気プルームが増した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/22 19:504地すべりと地震が発生．Perttu et al. (2020)
2018/12/22 20:004地すべりと地震が発生．Perttu et al. (2020)
2018/12/22 20:5551度目の山体崩壊とマグマ水蒸気噴火が発生．目撃した漁師によると，"split in two".Perttu et al. (2020)
2018/12/22 21:035噴火により，火山周辺は暗い噴煙に包まれた．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/22 21:275最初の津波がスマトラ島とジャワ島海岸を襲い，約15m内陸に浸入した．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/22 21:3152回目の津波がさらに内陸部まで浸入し，甚大な被害をもたらした．Smithsonian GVP Eruptive History
2018/12/22 22:2552回目の山体崩壊とマグマ水蒸気噴火が発生．Perttu et al. (2020)
2018/12/22 22:5553回目の山体崩壊とマグマ水蒸気噴火が発生．Perttu et al. (2020)
2018/12/22 23:55約5.5日間5津波後も噴火活動は依然として激しく，噴火音が聞こえていた．噴煙は高度16 kmに達した．浅瀬でスルツェイ式噴火が起こっていたと考えられる．24日の観測で島が大規模に崩壊していることが判明した．SO2量も非常に多かった．Smithsonian GVP Eruptive History，Perttu et al. (2020)
2018/12/28 05:05約30時間2断続的な噴火は一度落ち着いた．Perttu et al. (2020)
2019/01/04約28日間4スルツェイ式噴火は2019年1月まで続いた．この期間に噴煙は最大で1.2 kmまで上昇した．Smithsonian GVP Eruptive History
2019/01/04約24時間44日はほぼ断続的に噴火が発生し，5日は活動が少し収まった．Smithsonian GVP Eruptive History
2019/01/05約96時間420秒から13分続く噴火が発生し，噴煙は最大で高度1.2 kmに達した．Smithsonian GVP Eruptive History
2019/01/09 12:002山体崩壊によって開いた湾が閉じ，円形の火口湖を形成．Smithsonian GVP Eruptive History
2019/01/11約8.0日間3白い噴煙が最大500 mまで上昇したのが観測された．Smithsonian GVP Eruptive History
噴火推移のイベント一覧．時間は全て現地時刻．

長期的活動推移

クラカタウ火山はスマトラ島とジャワ島の間，スンダ海峡にあるカルデラ火山である．スンダ海峡にはインド洋プレートの斜め沈み込みによるSumatra sliverの南東端が存在し，スマトラ島を貫くThe Great Sumatra faultがpull-apart basinを伴いながら海溝側へステップしMentawai faultに合流している．クラカタウ火山はこのpull-apart basinの東縁に位置している (Susilohadi et al., 2009)．Susilohadi et al. (2009)はクラカタウ火山の南側で南北に延びる完全に埋積された堆積盆(Krakatau Graben)を見出しており，これがカルデラ直下を通っている可能性がある．

1883年噴火前時点の旧クラカタウ島は，北からPerbuwatan (標高〜120 m), Danan (445 m), そして最も大きなRakata (813 m)の連続した3つの火山体からなっていた．これらは1883年噴火で破壊され，Rakataの山体の一部が滑落崖を残して残るのみである．北西にはSertung (別名Verlaten)，北東にはPanjang (別名Lang / Rakata Kecil/ Krakatau Kecil)という細長い島があり，どちらも1883年噴火で消滅しなかった．両島は先クラカタウのカルデラ外輪山とする見方があるがはっきりしない．1883年噴火以降PerbuwatanとDananがあった付近に新島としてAnak Krakatauが形成された．Anak Krakatauは1883年噴火のカルデラ縁という重力的に不安定な場所で小規模な噴火を繰り返した結果，標高338 mまで成長していた (Global Volcanism Program, 2019c)．

引用文献

Global Volcanism Program (2015) Report on Krakatau (Indonesia) (Venzke, E., ed.). Bulletin of the Global Volcanism Network, 40:8. Smithsonian Institution. https://doi.org/10.5479/si.GVP.BGVN201508-262000

Global Volcanism Program (2018) Report on Krakatau (Indonesia) (Crafford, A.E., and Venzke, E., eds.). Bulletin of the Global Volcanism Network, 43:10. Smithsonian Institution. https://doi.org/10.5479/si.GVP.BGVN201810-262000

Global Volcanism Program (2019c) Report on Krakatau (Indonesia) (Krippner, J.B., and Venzke, E., eds.). Bulletin of the Global Volcanism Network, 44:3. Smithsonian Institution. https://doi.org/10.5479/si.GVP.BGVN201903-262000

Perttu, A., Caudron, C., Assink, J. D., Metz, D., Tailpied, D., Perttu, B., Hibert, C., Nurfiani, D., Pilger, C., Muzli, M., Fee, D., Andersen, O. L. and Taisne, B. (2020) Reconstruction of the 2018 tsunamigenic flank collapse and eruptive activity at Anak Krakatau based on eyewitness reports, seismo-acoustic and satellite observations. Earth and Planetary Science Letters, 541, 116268. https://doi.org/10.1016/j.epsl.2020.116268

Susilohadi, S., Gaedicke, C. and Djajadihardja, Y. (2009) Structures and sedimentary deposition in the Sunda Strait, Indonesia. Tectonophysics, 467, 55-71. https://doi.org/10.1016/j.tecto.2008.12.015