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Photo of the volcano
噴火初期,5/27の写真に着色が施されたもの.
作成・引用: The Krakatoa Committee of the Royal Society, ライセンス: Public Domain

クラカタウ
1883年噴火

Krakatau 1883 Eruption
  • 発生地域: インドネシア
  • スンダ海峡
  • 噴火規模: VEI 6
  • ※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による

    9 km3 DRE

    最高噴煙高度: 40 km

  • マグマ組成: デイサイト質
  • 噴火トレンド: エスカレート型
火山の位置(厳密な火口の位置を示すものではない).テフラ等層圧線・火砕流の到達範囲はTakarada et al. (2016)を改変.

主要な噴出物等

  • 降下火砕物
  • あり

  • 火砕流
  • あり

  • 溶岩
  • 海底であるため不明

外部リンク:

米スミソニアン博物館 Volcanoes of the World: Krakatau

噴火の全体的な推移

カーソルを合わせると詳細が表示される.噴出率(MER)はSelf (1992)の噴煙高度をMastin et al. (2009)の式により換算したもの.火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】

前兆現象・噴火開始

Simkin & Fiske (1983)が当時の記録を時系列に詳細にまとめており,またSelf (1992)が火山学的な解釈を与えた推移図を描いている.1880/09/01に, スンダ海峡付近で大きな地震があり,オーストラリアでも有感になった.1983年は,5月に入って噴火開始に先立って複数回の有感地震の増加があった.5/20にプリニー式噴火があり,その後噴火活動が消長しながら8月のクライマックスを迎えた.

5/19に航行中の船が煙と湯気を目撃.5/20未明から午前にかけてプリニー式噴火が起こった.以降間欠的な爆発を繰り返す.27日にクラカタウ島に上陸したSchuurmanらが噴火するPerbuwatanの写真を撮影し,それがカルデラ形成前のクラカタウ島を写した唯一の写真である.このとき山麓では30 cmの明色の軽石層を60 cmの灰色の火山灰が覆っており,それぞれデイサイト質と玄武岩質であった.それ以降の島の情報は少ない.6/24にPerbuwatanの山頂が失われているとの報告.この後大気異常現象の記録が多い.7/9にスンダ海峡を通過した船が1380 kmにわたって漂流軽石の中を航行し,その後同様の報告多数.Self (1992)は噴煙柱高度20 kmクラスの噴火があったと推測している.8/11にFerzenaarがKrakatauを調査し,部分的な地形図を描いている.このときDananが噴気を上げていたほか,島の各所から蒸気が上がっていた.8/12には島北岸で,海水準より数m高い場所に火口が形成されて3.4 kmまで噴煙が上がっているのが目撃された.8/19-22は噴火停止していたらしい.

噴火推移

8/22夜に航行中の船から噴煙柱と火山雷が目撃され,翌日にかけて周辺の船に激しく砂と灰が降下した.25日には80 km NNWのTelok Betongに灰と軽石が降った.26日には100 km以上離れたBatavia(ジャカルタ)に弱い降灰があった.

8/26 13:00に100 km弱離れたジャカルタで降灰.14:00に120 km離れた船から観測された噴煙柱高度は26 kmに達し,Self (1992)はこれをClimactic Phase Iとした.15:30頃から爆発音と津波が頻発するようになる.噴火は翌27日朝にエスカレートし,Self (1992)は7:00時点での噴煙柱高度は40 km以上と推定した (Climactic Phase II).いずれかの時点で洋上をわたった火砕流が60 km離れたLampong Bayに到達.9:58,最大の爆発音.同じ頃最大規模の津波が発生.14:30頃爆発音が聞こえなくなる.28日1:00頃降灰終了.有感地震は9月末まで続いた.クライマックスの噴出物はデイサイト質であり,非常に大まかな見積もりであるものの16 km3の大規模火砕流堆積物と12 km3の降下火砕物からなる.

日付時刻継続時間(h)VUC内容出典
1883/05/09約24時間2複数の有感地震@ジャワ島 First PointSimkin & Fiske (1986)
1883/05/15約5.0日間2複数の有感地震@Ketimbang 40km NNESimkin & Fiske (1986)
1883/05/17 10:252有感地震@Anjer 55 km ESimkin & Fiske (1986)
1883/05/193通りすがりの船が煙と湯気を目撃。ただしAnjerの住民は雲と解釈。Simkin & Fiske (1986)
1883/05/20 06:00約84時間5Perbuwatanから噴火。Anjer(55 km E)で地震と激しい降灰。23日頃まで降灰報告多数。Simkin & Fiske (1986)
1883/05/20 10:30630分で高度11 kmに達する噴煙。広く聞こえる爆発音。翌日以降海面上に軽石が目撃。27日の上陸調査で島内に1ftの軽石。Simkin & Fiske (1986)
1883/05/23約80日間4間欠的に爆発を繰り返す。弱めの降灰と爆発音。地震も散発的に継続。Simkin & Fiske (1986)
1883/05/273SchuurmanらがKrakatauに到着。Perbuwatanで5-10分沖の爆発を観察。島北部は樹木に葉がなく、岸辺では1ftの軽石を2ftの火山灰が覆っていた。Simkin & Fiske (1986)
1883/05/27 04時頃2複数の広く有感の地震。Simkin & Fiske (1986)
1883/06/244蒸気の柱が2つに増える。大きいものが北。Perbuwatanの山頂が消滅しているとの報告。Simkin & Fiske (1986)
1883/07/095スンダ海峡を西に通過する船が、3日間1380 kmにわたって漂流軽石の中を航行。以降再び1ヶ月程度漂流軽石の報告複数。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/113FerzenaarがKrakatauを調査。Dananから3つめの蒸気が立ち上っており、その他に11カ所もの噴気孔を目撃。植生は完全に破壊されていた。灰は岸辺で0.5mの厚さでマントルしていた。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/123噴煙高度3400 m。島北岸で、海水準の数m高いところで新しい?火口が目撃されるSimkin & Fiske (1986)
1883/08/19約72時間08/19-22 噴火停止していたらしいSelf (1992) Fig.3
1883/08/22 21:00約9.0時間5夜間、噴煙柱と鮮やかな雷が船から目撃される。翌日午前にかけて、複数の船が激しい砂と灰の降下に見舞われる。火口から上がる厚い噴煙柱が目撃される。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/25 19:005灰と軽石がTelok Betong (80 km NNW)に降ったSimkin & Fiske (1986)
1883/08/26 10:00約5.0時間4Bataviaで15時まで非常に細粒の降灰Simkin & Fiske (1986)
1883/08/26 14:006122 km E-Nを航行中の船が高度26kmの黒色噴煙柱を観測。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/26 14:006この頃海峡の両側は闇に包まれる。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/26 15:342ジャカルタで最初の爆発音が観測されるSelf (1992) Fig.3
1883/08/26 15:372最初の津波(以降不詳Self (1992) Fig.3
1883/08/27 07:007Self (1992) Fig.3
1883/08/27 09:062大きな津波Self (1992) Fig.3
1883/08/27 09:584最も大きな爆発音と津波Self (1992) Fig.3
1883/08/27 13:00約60分間4Lampong Bayで泥雨。1時間後灰雨に。Self (1992) Fig.3
1883/08/27 14:303この頃大きな爆発音が聞こえなくなるSelf (1992) Fig.3
1883/08/28 01:302First Point灯台で降灰の終了Self (1992) Fig.3
1883/08/28 12:000船(Loudon)がクラカタウが消滅していることに気づく。煙も見当たらず。北方の浅瀬からは煙が上がっていた。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/28 01時頃約31日間29月末まで地震活動が継続Self (1992) Fig.3
1883/08/29 15時頃0漂流軽石。北方の浅瀬は鯨の潮吹きのように噴気を上げているのが目撃。Simkin & Fiske (1986)
1883/08/30 12時頃0バタビア以降潮位変動はバックグラウンドレベルにSimkin & Fiske (1986)
1883年31919年の水深測定で後のAnak Krakatauに相当する地形があった?Simkin & Fiske (1986)
噴火推移のイベント一覧.時間は全て現地時刻.

長期的活動推移

Krakatauはスマトラ島とジャワ島の間,スンダ海峡にあるカルデラ火山である.スンダ海峡にはインド洋プレートの斜め沈み込みによるSumatra sliverの南東端が存在し,スマトラ島を貫くThe Great Sumatra faultがpull-apart basinを伴いながら海溝側へステップしMentawai faultに合流している.Krakatauはこのpull-apart basinの東縁に位置している.Susilohadi et al. (2009)はKrakatauの南側で南北に延びる完全に埋積された堆積盆(Krakatau Graben)を見出しており,これがカルデラ直下を通っている可能性がある.

1883年噴火前時点の旧クラカタウ島は,北からPerbuwatan (標高~120 m), Danan (445 m), そして最も大きなRakata (813 m)の連続した3つの火山体からなっていた.これらは後述の1883年噴火で破壊され,Rakataの山体の一部が滑落崖を残して残るのみである.北西にはSertung (別名Verlaten),北東にはPanjang (別名Lang / Rakata Kecil/ Krakatau Kecil)という細長い島があり,どちらも1883噴火を生き延びた.両島は先クラカタウのカルデラ外輪山とする見方があるがはっきりしない.1883年以降PerbuwatanとDananがあった付近に新島としてAnak Krakatauが形成された.Anak Krakatauは1883カルデラ縁という重力的に不安定な場所で標高338 mにまで成長したが,2018年に山体崩壊とプリニー式噴火を起こし110 mまで低下した.

1883年噴火で旧クラカタウ島の大部分が失われてしまったため,それ以前の噴火史についての情報は極めて乏しい.Abdurrachman et al. (2018)はStehn (1929)を元に,SertungおよびPanjang島にみられるデイサイト質溶岩は先史時代の416年頃の活動によるものだとしている.1200年頃,Rakataが活発に溶岩を噴出し成長した.続いてDanan・Perbuwatanも溶岩を噴出していたようである.1680年5月には地震・雷鳴・硫黄の匂い・漂流軽石が記録されている.

引用文献

Abdurrachman, M., Widiyantoro, S., Priadi, B., Ismail, T., 2018. Geochemistry and Structure of Krakatoa Volcano in the Sunda Strait, Indonesia. Geosci. J. 8, 111. https://doi.org/10.3390/geosciences8040111

Self, S., 1992. Krakatau revisited: The course of events and interpretation of the 1883 eruption. GeoJournal 28, 109–121. https://doi.org/10.1007/BF00177223

Sigurdsson, H., Carey, S., Mandeville, C., Bronto, S., 1991. Pyroclastic flows of the 1883 Krakatau eruption. Eos Trans. AGU 72, 377–377. https://doi.org/10.1029/90EO00286

Simkin, T., Fiske, R.S., 1983. Krakatau, 1883--the volcanic eruption and its effects. Smithsonian Institution Press.

Susilohadi, S., Gaedicke, C., Djajadihardja, Y., 2009. Structures and sedimentary deposition in the Sunda Strait, Indonesia. Tectonophysics 467, 55–71. https://doi.org/10.1016/j.tecto.2008.12.015

Takarada, S., Ishikawa, Y., Maruyama, T., Yoshimi, M., Matsumoto, D., Furukawa, R., Teraoka, Y., Bandibas, J.C., Kuwahara, Y., Azuma, T., Takada, A., Okumura, K., Koizumi, N., Tsukuda, E., Solidum, RU., Daag, AS., Cahulogan, M., Hidayati, S., Andreastuti, S., Li, X., Nguyen, H.P. and Lin, C-H. (2016) Eastern Asia Earthquake and Volcanic Hazards Information Map. Geological Survey of Japan, AIST.