ノヴァラプタ・カトマイ
1912年噴火
- 発生地域: アメリカ アラスカ半島
- 噴火規模: VEI 6
- マグマ組成: 流紋岩〜デイサイト〜安山岩質
- 噴火トレンド: 減衰型
※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による
13.5 km3 DRE
最高噴煙高度: 不明
主要な噴出物等
- 降下火砕物
- 火砕流
- 溶岩
- その他
あり
あり
ピーク後,溶岩ドームを形成
長径4.2 kmのカルデラが形成された
前兆現象・噴火開始
僻地であるため,1912年以前の噴火は記録されていない.1912年以降も,確実な噴火は1953年から21年間にわたってTrident火山群で起こった間欠的なブルカノ式噴火のみである.
噴火推移
爆発的噴火としては20世紀最大の噴出量(13.5 km3 DRE)の噴火であった.僻地であるため当時の記録は極めて限られているが,Hildreth and Fierstein (2012)が噴出物の観察結果を中心に噴火の背景および時系列を非常に詳細にまとめている.地震活動についてはAbe (1992)が50個の地震の時刻と規模を決定しているが,当時の地震計網の感度の限界からM5.5以下のものは十分に検知できていない.
この噴火ではNovaruptaと呼ばれるじょうご型構造の火口が新規に形成され,24時間のうちに6 km3 DREの大規模な火砕流が噴出し,溶結凝灰岩で埋め立てられた”Valley of Ten Thousand Smokes (VTTS)”を形成した.これと平行あるいはやや遅れてNovaruptaから約10 km離れた場所にあった連峰のKatmai頂部が激しい水蒸気爆発を伴いながら1000 mあまり陥没した.複数の系統のマグマが噴出したことも特徴で,噴火当初では流紋岩質(77% SiO2)だがその後デイサイト質(63 -69% SiO2)および安山岩質(58 -63% SiO2)の噴出物の割合が増加する.最終的にNovarupta火口には溶岩ドームが形成された.
日付時刻 | 継続時間(h) | VUC | 内容 | 出典 |
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1912/06/01 | 1 | 少なくとも5日前から有感地震があったとの証言あり | Hildreth and Fierstein (2012) p19 | |
1912/06/04 | 2 | 激しい有感地震 | Hildreth and Fierstein (2012) p19 | |
1912/06/05 | 2 | 激しい有感地震 | Hildreth and Fierstein (2012) p19 | |
1912/06/06 05:08 | 2 | 最初の地震計により観測された地震 (Ms 5.4) | Table 2 in Abe (1992) | |
1912/06/06 08時頃 | 約5.0時間 | 4 | 時刻不詳: 朝、住民が爆発音を聴く。時間が経つにつれより大きく頻繁に。 | Hildreth and Fierstein (2012) p19 |
1912/06/06 13:00 | 6 | 88 km離れた船により噴煙が初めて目撃される。噴煙はより大きくなり18時までに船に降灰。 | Hildreth and Fierstein (2012) p19 | |
1912/06/06 15時頃 | 約18時間 | 4 | 100マイル以上先まで聞こえる爆発音。翌日朝にかけて連発。 | Hildreth and Fierstein (2012) p19 |
1912/06/06 18時頃 | 約6.0時間 | 2 | 深夜にかけて大きい地震(M5-6)が集中する | Fig. 10 of Abe (1992) |
1912/06/06 23:56 | 7 | Fig.2 of Hildreth and Fierstein (2012) | ||
1912/06/06 23:56 | 2 | Ms 6.5の地震(それまでで最大) | Fig.2 of Hildreth and Fierstein (2012) | |
1912/06/07 05時頃 | 0 | 時刻不詳: 4時間後に降灰の一次停止 | Fig.2 of Hildreth and Fierstein (2012); Approximately interpreted from figure | |
1912/06/07 08時頃 | 6 | Fig.2 of Hildreth and Fierstein (2012); Approximately interpreted from figure | ||
1912/06/07 12時頃 | 約10時間 | 2 | 午後、M7地震に向けて再び徐々に地震活動が高まる。 | Fig. 10 of Abe (1992) |
1912/06/07 21:36 | 2 | Ms 7.0 (最大の地震) | Table 2 in Abe (1992) | |
1912/06/08 14:30 | 0 | 時刻不詳: 4時間後に降灰の一次停止 | Fig.2 of Hildreth and Fierstein (2012) | |
1912/06/08 16時頃 | 5 | Fig.2 of Hildreth and Fierstein (2012); Approximately interpreted from figure | ||
1912/06/09 07時頃 | 5 | 時刻不詳: 朝日に照らされたじょうご型の噴煙が目撃 | Hildreth and Fierstein (2012) p21 | |
1912/06/10 06:06 | 2 | Ms 6.9 (2番目に大きい地震) | Table 2 in Abe (1992) |
長期的活動推移
カトマイ火山群(Katmai Volcano Cluster)はアラスカ半島の付け根に位置する火山群である.アリューシャン沈み込み帯の火山フロントに位置しており,背弧側の裾野は大規模な横ずれ断層であるBruin Bay断層帯に規制されている.火山群は西北西から東南東方向に20 kmあまりの距離に密集した噴出中心からなる.地理的にはKatmai, Trident 火山群, Mageik, Martinなどの火山体が知られているが,これらの名称は火山学上のの噴出中心とは十分に対応しない.加えてこの火山列から10 km程度北側には成層火山体のGriggsが位置している.いずれも安山岩~デイサイト質のマグマ組成を主体とした火山であり,Katmai以外の火山は1912年噴火の主体である流紋岩質マグマを噴出したことがない.
引用文献
Hildreth, W., Fierstein, J., 2012. The Novarupta-Katmai Eruption of 1912: Largest Eruption of the Twentieth Century : Centennial Perspectives. U.S. Geological Survey. https://pubs.usgs.gov/pp/1791/