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Photo of the volcano
1976年噴火のブロックアンドアッシュフローによってもたらされた直径6 mに達する岩塊.
作成・引用: Harry Glicken (US Geological Survey), ライセンス: Public Domain

オーガスティン
1976年噴火

Augustine 1976 Eruption
  • 発生地域: アメリカ
  • アラスカ半島
  • 噴火規模: VEI 4
  • ※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による

    0.39 km3 DRE

    最高噴煙高度: 14 km

  • マグマ組成: 安山岩質
  • 噴火トレンド: 多峰型
火山の位置(厳密な火口の位置を示すものではない).

主要な噴出物等

  • 降下火砕物
  • あり

  • 火砕流
  • あり

  • 溶岩
  • 噴火終盤に溶岩ドームを形成

外部リンク:

米スミソニアン博物館 Volcanoes of the World: Augustine

噴火の全体的な推移

カーソルを合わせると詳細が表示される.火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】

前兆現象・噴火開始

5年前,1971年に噴火があったが,古い文献では76年噴火以前は12年の休眠期にあったと書かれ見過ごされていることがある(e.g. Kienle and Shaw, 1979; Kamata et al. 1991).これは地震計が1970年に島内に設置されてから最初の顕著な火山活動であった(Power and Lalla, 2010).8/30から9/6まで激しい火山構造性地震の群発活動があった.9/3には山体東側から激しい噴気が起きている様子が目撃された.10/7 23:00 – 10/8 1:00 (AKDT: UTC-8)に火山性微動が観測され,同じ頃38 km離れた洋上の漁船が山頂の赤熱と降灰を目撃した.11/28-30と12/19-21にも以前のものより小さな群発地震活動があった.1976年噴火に対しては,先行して1975年の5/2 -6と5/27頃に火山構造性地震が群発した.5/27以降,9/14,11月末と定常的な地震活動が段階的に高まっていたが,12月に島内の複数の地震計が故障してしまったため以降は遠隔地の地震計観測による.10月の観察では噴気活動が高まっていた.

噴火推移

噴火は1976年1月22日から数日続いた最初の爆発的噴火活動,2/6に再開し1週間弱続いた2回目の爆発的噴火活動,そして2/12以降に成長した溶岩ドームの形成活動に分けられる.文献により時刻の誤植および時差の計算ミスに伴う混乱が多数あるが,本文では断りのない限りKienle and Shaw (1979)のFig. 3を信頼し,現地時刻として文献に多く登場するが現在は用いられないAST(Alaska Standard Time UTC-10)で表記する.僻地であるため目撃された現象に乏しく,遠地における地震計とインフラサウンドの観測に依っている部分が大きい.

最初の爆発的噴火活動はKienle and Shaw (1979)に詳しい.まず8時頃に短い微動,続いてインフラサウンド(可聴域未満の大気中音波)が観測された.10時頃レーダーに高度14 kmの噴煙が現れ,その後14:30にAugustineの西200 km高度9 kmを飛行していた2機のF-4E戦闘機が噴煙に突入して軽い損傷を受けた.16:19にも噴火があり,噴煙が上昇,圏界面に到達して広がる経過が撮影された.18時頃に顕著な地震活動があり,翌23日4時頃から顕著な微動,続いてインフラサウンドが観測され,噴煙高度10 kmクラスの噴火を25日まで繰り返した.25日の14時には高度10 kmを飛行中のJAL貨物機が火山灰に入り損傷している.一連の噴火は1935と1964溶岩ドームの間の新火口で発生し,これらのドームを破壊した.

2回目の爆発的噴火活動についてはReeder and Lahr (1987)に詳しい.噴火は2/6 15:44 (14:44 AKST)頃に始まったとみられ,間欠的に14日頃まで続いた.2/8が最盛期であったが噴煙柱高度は7 kmにとどまり,1回目の活動よりは弱かったとみられる (Stith et al. 1978).2/12日に溶岩ドームが目撃されているが,その後活動は静穏化する.本格的に溶岩ドームが成長したのは4/13-18に活動が再開したときとみられ,ブロックアンドアッシュフローに特徴的な地震計シグナルが多数観測された.

1976年噴火の噴出物は0.39 km3の60-62% SiO2の安山岩質であった(Swanson and Kienle, 1988).噴火初期のやや大きな爆発的噴火による堆積物は専ら火山灰と火砕流堆積物からなるが,一連の噴出物の上位には軽石層がありKamata et al. (1991)はこれを1/25 5時頃の噴火に対応させている.

日付時刻継続時間(h)VUC内容出典
1976/01/22 07:592短い微動Kienle and Shaw (1979)
1976/01/22 08:384インフラサウンドKienle and Shaw (1979)
1976/01/22 10時頃6レーダーが噴煙柱高度14 kmを観測Kienle and Shaw (1979)
1976/01/22 16:19約30分間4かなとこ状(anvil-shaped)の噴煙が撮影されるKienle and Shaw (1979)
1976/01/22 18時頃約60分間2顕著な地震活動Kienle and Shaw (1979)
1976/01/23 03:53約7.0時間4微動、続いてインフラサウンド。以降間欠的に繰り返し。Kienle and Shaw (1979)
1976/01/23 06:125レーダーが噴煙高度11 kmを観測Kienle and Shaw (1979)
1976/01/23 09時頃5噴煙高度12 km? 飛行機パイロットによるKienle and Shaw (1979)
1976/01/23 16時頃5最も長いインフラサウンド。もっとも長い微動の一つ。噴煙高度>8 km。Kienle and Shaw (1979)
1976/01/24 01:304レーダー噴煙>4 km、インフラサウンド、微動Kienle and Shaw (1979)
1976/01/24 09時頃5噴煙12 km? インフラサウンドKienle and Shaw (1979)
1976/01/25 05時頃6長いインフラサウンドと微動。Kienle and Shaw (1979)
1976/01/25 14時頃4不明。貨物機が飛行高度10kmで噴煙に突っ込み損傷。Kienle and Shaw (1979)
1976/02/06 15:44約8.0日間4噴火の再開Power and Lalla (2010)
1976/02/085再開した噴火のピークPower and Lalla (2010)
1976/02/1231976溶岩ドームが目撃されるPower and Lalla (2010)
噴火推移のイベント一覧.時間は全て現地時刻.

長期的活動推移

Augustineは最終氷期以降に活動を開始したとみられる成層火山である.山体は中心火道からたびたび噴出した溶岩ドームと,その崩壊物及び噴出した火砕物からなる斜面からなっている.マグマ組成は安山岩~デイサイト質であり,高い斑晶割合と流紋岩質の石基を特徴とする.僻地であるため19世紀以前は歴史記録に乏しいが,記録のある限り現在に至るまで頻繁に溶岩ドームの破壊と形成を繰り返している.1883年の噴火は山体崩壊とそれによる津波を伴う大規模なものだった.

引用文献

Kamata, H., Johnston, D.A., Waitt, R.B., 1991. Stratigraphy, chronology, and character of the 1976 pyroclastic eruption of Augustine volcano, Alaska. Bull. Volcanol. 53, 407–419. https://doi.org/10.1007/BF00258182

Kienle, J., Shaw, G.E., 1979. Plume dynamics, thermal energy and long-distance transport of vulcanian eruption clouds from Augustine Volcano, Alaska. J. Volcanol. Geotherm. Res. 6, 139–164. https://doi.org/10.1016/0377-0273(79)90051-9

Power, J.A., Lalla, D.J., 2010. Seismic Observations of Augustine Volcano, 1970–2007, in: John A. Power, Michelle L. Coombs, Jeffrey T. Freymueller (Ed.), The 2006 Eruption of Augustine Volcano, Alaska. https://pubs.usgs.gov/pp/1769/

Power, J.A., Nye, C.J., Coombs, M.L., Wessels, R.L., Cervelli, P.F., Dehn, J., Wallace, K.L., Freymueller, J.T., Doukas, M.P., 2006. The reawakening of Alaska’s Augustine volcano. Eos Trans. AGU 87, 373. https://doi.org/10.1029/2006EO370002

Reeder, J. W., Lahr, J. C., 1987. Seismological Aspects of the 1976 Eruptions of Augustine Volcano, Alaska (Vol. 1768). U.S. Government Printing Office. https://doi.org/10.3133/b1768

Stith, J.L., Hobbs, P.V., Radke, L.F., 1978. Airborne particle and gas measurements in the emissions from six volcanoes. J. Geophys. Res. 83, 4009. https://doi.org/10.1029/JC083iC08p04009

Swanson, S.E., Kienle, J., 1988. The 1986 Eruption of Mount St. Augustine: Field Test of a Hazard Evaluation. J. Geophys. Res. 93, 4500–4520. https://doi.org/10.1029/JB093iB05p04500