フンガ・トンガーフンガ・ハアパイ
2022年噴火
- 発生地域: トンガ トフア弧
- 噴火規模: VEI 6
- マグマ組成: 玄武岩質安山岩
- 噴火トレンド: エスカレート型
※VEIは暫定値
6-7 km3 (海底の水深変化) + ? km3 (降下火砕物)
最高噴煙高度: 55 km
主要な噴出物等
- 降下火砕物
- 火砕流
- 溶岩
- その他
あり
あり
海底であるため不明
直径約3 kmのカルデラが拡大陥没した
前兆現象・噴火開始
20世紀以降の記録しかないが,数十年程度の間隔をおきながら山頂カルデラの内外でスルツェイ式噴火活動を繰り返していた.直近の2014-15年噴火では,カルデラ内北側に火砕丘を形成し,フンガ・トンガ島とフンガ・ハアパイ島が接続された.それ以降2021年12月19日まで静穏であった.噴火開始の約24時間前,12/18 22:01 (UTC)にESA Sentinel-2が島を撮影しているが,それ以前の画像と比較して山体や海水変色域に異常は見られない.
噴火推移
現地時刻で12/20 09:30 (UTC+13)に始まったやや強い噴火により活動を開始した.火口は2014-15年噴火火口から数百メートル北東の位置であった.JAXA ひまわり8号の衛星写真によればおよそ2時間オーバーシュート部が観察される噴火であり,その後10時間程度連続噴煙状態を維持した.ESA Sentinel-2の12/23 22:02 (UTC)に撮影された衛星写真には,このとき放出したとみられる数十km2程度の小規模な軽石いかだが島の西方にみられる.12/21 11:30からその後25日までほぼ連続噴煙状態が続いたが,それ以降はひまわり8号に映る噴煙をあげる頻度は大幅に減じた.ただし30日にはドローンによりスルツェイ式噴火活動が続いている様子が撮影されている.
1/14,再びやや強い噴火が発生.ひまわり8号の衛星写真ではオーバーシュート部は4時間程度継続してみられ,更にその後23時間あまりにわたるつよい連続噴煙状態となった.後者はトンガ地質調査所によって連続的で激しいマグマ水蒸気爆発として船から観察され,噴煙高度は18-20 kmと推定された.噴煙は15日翌朝には完全停止しており,フンガ・トンガ島とフンガ・ハアパイ島をつないでいた火砕丘が破壊され海峡となっている様子がPlanet社Skysat衛星により撮影されている.
15日 17:00-17:10の間に大規模噴火が開始した.25分あまりで噴煙は60 km離れたヌクアロファに到達.その後17:33にはヌクアロファを津波が襲い始める.同じ17:30にはひまわり8号とGOES-16衛星の視差から求められる噴煙高度はピークの55 kmに達し(Weathermodels, 2022),直ちに崩れ花弁状に全周に向かって広がり笠雲を形成した.笠雲の頂部高度は3時間程度30~40 kmを維持し,その後20~25 kmに減じ更に4時間継続した(NASA Earth Observatory, 2022).06:09にSentinel-1衛星により撮影されたSAR画像では,フンガ・トンガおよびフンガ・ハアパイ島の面積が劇的に縮小している様子が写っていた.噴煙は9:00頃から解消し,11:00頃にはヌクアロファの雲が晴れた.その後16-17日にかけて4~5回小さな白煙を上げている様子がGOES-16衛星により捉えられた.18日11:01に撮影されたSentinel-2衛星の画像では半径100 kmの海が懸濁し微小な軽石いかだが点在している様子が写っているが,小さくなった2つの島の周辺に特段の変色域や噴気活動はみられず,主要な噴火は終了したものと考えられる.噴火直後の16日から最大でM5程度に達する活発な地震活動が始まり,18日にはUSGS ComCatカタログに11回のM4~5の地震が記録されている.その後頻度はゆっくりと減じ,約1ヶ月程度で地震活動は終息した.
日付時刻 | 継続時間(h) | VUC | 内容 | 出典 |
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2021/12/19 11:01 | 0 | Sentinel-2が島を撮影。山体・海水変色に特異な点なし。 | SentinelHub EOBrowser https://sentinelshare.page.link/wkRN | |
2021/12/20 09:30 | 約2.0時間 | 6 | 強い噴火。<50 km2の軽石いかだの発生。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2021/12/20 11:30 | 約10時間 | 4 | 連続噴煙状態。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2021/12/21 11:30 | 約4.2日間 | 4 | 連続噴煙状態が25日まで続く | ひまわり8号およびGOES-16 |
2021/12/25 17:00 | 約19日間 | 3 | 12/25-1/13 海水変色。稀に噴煙。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2021/12/29 05:30 | 約2.5時間 | 4 | やや連続的な噴煙。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2021/12/30 12:00 | 4 | 弱いスルツェイ式噴火活動をしている様子が撮影される。 | Tonga Geological Services https://www.youtube.com/watch?v=CXZNlnuDnHg | |
2022/01/14 04:20 | 約4.0時間 | 6 | 強い噴火。オーバーシュート部分が見える。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2022/01/14 08:20 | 約6.0時間 | 4 | 連続噴煙状態。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2022/01/14 14:20 | 約5.0時間 | 5 | 強い連続噴煙状態が続く。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2022/01/14 17:48 | 5 | 絶え間ないマグマ水蒸気爆発をしている様子が撮影される。 | Tonga Geological Services https://www.youtube.com/watch?v=Y4NpOIdV8To | |
2022/01/14 19:20 | 約11時間 | 4 | 連続噴煙状態、次第に間欠的になり噴煙停止。 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2022/01/15 15:25 | 2 | Planet社Skysatが島を撮影。噴火停止状態。火砕丘は破壊され、島は2つにわかれている。海峡部からは茶色い海水変色が湧き出している。 | Planet Team https://twitter.com/planet/status/1482415545437732868 | |
2022/01/15 17:00 | 約30分間 | 7 | 噴煙の出現。以降急速に拡大・成長 | ひまわり8号およびGOES-16 |
2022/01/15 17:15 | -1 | 270秒間でMw 6.0前後の爆発地震が立て続けに4回発生 | Thurin et al. (2022) | |
2022/01/15 17:15 | 約8.0時間 | 2 | これ以降連続的に津波が南方60 kmのヌクアロファを襲う。顕著な潮位変動は8時間余り続いた。 | Borrero et al. (2022) Preprint |
2022/01/15 17:26 | -1 | 巨大な傘型噴煙を背景に立て続けに破裂音が響く映像が撮影される。 | Borrero et al. (2022) Preprint | |
2022/01/15 17:30 | 約8.0時間 | 7 | 最高噴煙高度56.1 kmに到達。ひまわり8号とGOES-16衛星の視差から求められたもの。 | Carr et al. (2022) |
2022/01/15 17:50 | 2 | ヌクアロファの検潮所で観測された最大の津波125 cm | Borrero et al. (2022) Preprint | |
2022/01/15 18:00 | 約7.5時間 | 6 | オーバーシュート部分は崩壊し高度35 km付近で傘型噴煙が拡大 | NASA Earth Observatory https://earthobservatory.nasa.gov/images/149474/tonga-volcano-plume-reached-the-mesosphere |
2022/01/16 01:30 | 約3.5時間 | 5 | 高度>30 kmの傘型噴煙が噴出地点を離れる。引き続き高度20 km程度の噴煙高度を維持。 | NASA Earth Observatory https://earthobservatory.nasa.gov/images/149474/tonga-volcano-plume-reached-the-mesosphere |
2022/01/16 05:00 | 約2.0時間 | 4 | 噴煙高度が15 km以下になる。 | NASA Earth Observatory https://earthobservatory.nasa.gov/images/149474/tonga-volcano-plume-reached-the-mesosphere |
2022/01/16 06:09 | 0 | Sentinel-1がSARで島を撮影。2つの島が大幅に小さくなっている様子が判明。 | SentinelHub EOBrowser https://sentinelshare.page.link/THcw | |
2022/01/16 07:00 | 0 | 噴煙が噴出地点を離れる。 | NASA Earth Observatory https://earthobservatory.nasa.gov/images/149474/tonga-volcano-plume-reached-the-mesosphere | |
2022/01/16 10:40 | 4 | 小爆発? | GOES-16 | |
2022/01/16 22:20 | 4 | 小爆発? | GOES-16 | |
2022/01/17 03:00 | 4 | 小爆発? | GOES-16 | |
2022/01/17 06:20 | 4 | 小爆発? | GOES-16 | |
2022/01/17 09:30 | 4 | 小爆発?? | GOES-16 | |
2022/01/18 11:01 | 0 | Sentinel-2が周辺を撮影。半径100 kmの海が懸濁し、散り散りに軽石いかだが漂流。軽石いかだの面積はすべて足しても<50 km2程度。火口付近に変色域はなし。 | SentinelHub EOBrowser https://sentinelshare.page.link/KQXG |
長期的活動推移
フンガ・トンガーフンガ・ハアパイ火山は太平洋プレートがオーストラリアプレートに沈み込むトンガ・ケルマデック弧の北端,トフア弧に位置する海域火山である.トフア弧の西側では背弧海盆が拡大を続けており,East Lau Spreading Center(ELSC)は同火山のわずか60 km西を走っている.山体は比高約2000 mの円錐状であり,山頂には直径4 kmのカルデラがある.カルデラの北東縁がフンガ・トンガ島,北西縁がフンガ・ハアパイ島,そして無名の浅瀬が南縁を形作っている.
引用文献
Global Volcanism Program, 2022. Report on Hunga Tonga-Hunga Ha'apai (Tonga). In: Sennert, S K (ed.), Weekly Volcanic Activity Report, 12 January-18 January 2022. Smithsonian Institution and US Geological Survey. https://volcano.si.edu/showreport.cfm?doi=GVP.WVAR20220112-243040
Global Volcanism Program, 2022. Report on Hunga Tonga-Hunga Ha'apai (Tonga) (Crafford, A.E., and Venzke, E., eds.). Bulletin of the Global Volcanism Network, 47:2. Smithsonian Institution. https://volcano.si.edu/showreport.cfm?doi=10.5479/si.GVP.BGVN202202-243040
Tonga Volcano Plume Reached the Mesosphere. (2022, February 16). NASA Earth Observatory. https://earthobservatory.nasa.gov/images/149474/tonga-volcano-plume-reached-the-mesosphere
WeatherModels. (2022). 影の長さとか赤外輝度温度とかからだとオーバーシュートの高さを求めるのは難しいから,笠雲平坦部の最高高度のことかな?もしそうであれば,39kmは自分の解析ともほぼ合う. https://twitter.com/weather_models/status/1483415590329253890