羽伏磯火山(Hb)
新島の東岸,羽伏浦の北端にある羽伏磯(はぶしいそ)の海食崖に露出する溶岩をこの磯の名をとって羽伏磯火山と呼ぶことにする.津屋( 1938) はこの岩体を彼の宮塚山熔岩に含めてあるが,宮地( 1965) は,「宮塚山北東七曲り2)の峠附近」で,宮塚山熔岩の下位に「黒雲母流紋岩から成る灰岩層」を挟んで「ジナーカ系の旧山体」のあることを認めている.羽伏磯火山はこの「ジナーカ系の旧山体」に相当する.宮地
(1965,p. 646 の脚注)によれば,羽伏磯の沖にあるミクツ根も「ジナーカ系(角閃石流紋岩)」であることが確認されているので,この岩礁も羽伏磯火山に含めておく.この火山の現在確認されている分布範
囲は南北0.4 km,東西0.5 km,海面上の厚さが約150mであるが,実際にはもっと規模の大きな溶岩円頂丘であったろう.溶岩流出に先立って放出されたと考えられる火砕物は露出していない.都道211 号線の切り取りでは,溶岩の塊状表面を直接宮塚山火山火砕丘を構成する火砕物が覆っている.
溶岩は海食崖の下部では灰色,石質であるが,上部の都道切り取りでは灰白色,緻密,ガラス質で,真珠岩割れ目が発達しており,こわれやすい.この溶岩には非常にまれに径数cm の円味を帯びた苦鉄質包有物が認められる.宮地(1965)はこの火山の溶岩を角閃石流紋岩としているが,現著者の観察では黒雲母含有カミングトン閃石流紋岩である.
2) 都道211 号線が整備された結果,七曲りの急坂はそのごく一部が残存するにすぎない.現在では,この付近は「吹上げの坂」と呼ばれている.