岩石
新島・式根島・地内島及び早島の流紋岩単成火山を構成する岩石は,紫蘇輝石カミングトン閃石普通 角閃石流紋岩・紫蘇輝石カミングトン閃石流紋岩・紫蘇輝石普通角閃石カミングトン閃石流紋岩・カミングトン閃石流紋岩及び黒雲母流紋岩の溶岩及び火山砕屑性堆積物である.これら流紋岩は斑晶として,数- 10 数vol%の斜長石( アンデシン- オリゴクレイス) ,数- 10vol%の石英,およそ1vol%あるいは それ以下の苦鉄質珪酸塩鉱物及び1 vol%以下の鉄チタン酸化物〔チタン磁鉄鉱( titanomagnetite) 及び赤鉄鉱を固溶するチタン鉄鉱( ferrian ilmenite) 〕を含んでいる.石基はガラス質ないし微晶質で,スフェルライト構造の発達する場合もある.地表調査の結果だけからみると,量的には黒雲母流紋岩が多く,カミングトン閃石流紋岩がそれに次ぎ,紫蘇輝石斑晶を含む流紋岩が少ないようであるが,後者ほど下位に伏在している可能性が大きいので,厳密なことはいえない.
新島の北部を占める阿土山火山の流紋岩中にはかなり顕著に,また宮塚山火山の流紋岩中にはまれに,クリスクロス(criss-cross) 組織を有する苦鉄質包有物が見いだされる.これら苦鉄質包有物は分別晶出作用によって生じた集積岩であるとか,深部で地殻が一部溶融した結果生じたレスタイト(restite) であるとか,またはマグマ混合の際に,より冷たく,かつより珪長質なマグマ中で急速に晶出したマグマ物質であるとか考えられている.最近では,しかしながら,三番目の考え方が支持されている.
新島の北部,若郷集落及びその周辺に分布する,玄武岩質火砕サージ堆積物中の本質物質である玄武岩は,斑晶として3 vol%程度の斜長石( バイトウナイト),1vol%以下のかんらん石及び微量の鉄チタン酸化物を含んでいる.その石基は斜長石・単斜輝石・鉄チタン酸化物・かんらん石及びガラスからなり,これらのうちで斜長石とかんらん石とがやや大型である.
侵食などによって失われた量の見積りが困難なため,正確な量比を求めることは不可能に近いが,流紋岩類に比べて玄武岩は極めて少ない.
新島の中部,島分沢及び肩山に露出する灰色火山灰層中の本質岩片である安山岩は,斑晶として斜長石(アノーサイト-バイトウナイト),鉄チタン酸化物(主としてチタン磁鉄鉱),普通輝石及び古銅輝石 を有し,その石基は微細であるが斜長石及び単斜輝石が認められる.量的には玄武岩よりも少ない.
第1表にこれら単成火山を構成する代表的な岩石の化学組成が示されている.Nos. 1- 4 は紫蘇輝石カミングトン閃石普通角閃石流紋岩(I);no. 6 はカミングトン閃石流紋岩(II);nos. 7, 8, 12, 13, 15, 16 は黒雲母流紋岩(III);no. 5 は安山岩;nos. 10, 11 はかんらん石玄武岩である.また,nos. 9, 14 は流紋岩中の苦鉄質包有物;nos. 17, 18 はトーナル岩岩片である.流紋岩のうち,nos. 1, 6 及び15 を除き,灼熱減量は1%以下であるから,化学組成を議論する際に,加水によるアルカリ及びアルカリ土金属含 有量の変化9) は考慮しなくてもよいであろう.MgO-total iron as FeO-Na2O+K2O 図(第5図)では,I →II→IIIの順にNa2O + K2O の角に近づくようにプロットされる.安山岩は玄武岩と流紋岩類とを結ぶ 線上に,苦鉄質包有物は玄武岩の近くにそれぞれプロットされる.
FeO*:全鉄をFeOとして算出. 第1表,nos.1-9,11-14,16-18のデータをプロット
(図幅第7図)