地史
本地域に含まれる流紋岩火山の活動がいつ始まったかを示す直接の証拠は得られていない.しか
しながら,南西にある神津島の地質調査・研究( 例えば一色,1982 a) を参考にすると,数万年あるいは
10 万年ぐらい前から始まったのであろう.また,火山活動の場が海底であったか,陸上であったかにつ
いての積極的な証拠も得られていない.いずれにしても,火砕物の爆発的放出に始まり,溶岩円頂丘の
形成あるいは厚い1 枚の溶岩流の流出で終わる一輪廻の活動で,小型の火山が断続的に形成されていった.第4図に示すように,紫蘇輝石斑晶を含む流紋岩の活動で始まり,カミングトン閃石流紋岩,更に
黒雲母流紋岩の活動と引き継がれた.最新の活動は西暦886 年に起こり,新島の南部を占める向山火山
が形成された.この時,安房国( 房総半島先端部) まで降灰があり,場所によっては厚さ6- 9 cm に達した( 例えば,一色,1973) .古銅輝石普通輝石安山岩マグマの活動は,カミングトン閃石流紋岩マグマの活動期に,また,かんらん石玄武岩〔Kuno ( 1960) の高アルミナ玄武岩〕マグマの活動は,黒雲母流紋
岩マグマの活動期,今から3,000 年前から1,600 年前までの間(一色・磯部,1976)に起こっている.かんらん石玄武岩マグマの噴出中心は,新島の北端部を占める新島山火山溶岩円頂丘の西方海底と推定され
ている(一色・磯部,1976).
矢印で結んだ地質単元は野外で上下関係(矢印の先が上位)が確認あるいは推定されたもの.島分沢火山砕屑性堆積物及び大三山火山砕屑性堆積物を除く単元では,「火山」の語が省略されている.Hy-C-Ho:紫蘇輝石カミングトン閃石普通角閃石流紋岩,Hy-C:紫蘇輝石カミングトン閃石流紋岩,C:カミングトン閃石流紋岩,Aba:古銅輝石普通輝石安山岩,Hy-Ho-C:紫蘇輝石普通角閃石カミングトン閃石流紋岩,(B)C:黒雲母含有カミングトン閃石流紋岩,(C)B:カミングトン閃石含有黒雲母流紋岩,B:黒雲母流紋岩,Bo:かんらん石玄武岩
(図幅第6図)