神津島火山 Kozushima Volcano


icon 神津島周辺の地形

icon 地質概説
 icon 地史(地質図を含む)

 icon 岩石

icon 地質各説
  icon 神津島

   icon 氷長石化作用を受けたデイサイト溶岩
   icon 流紋岩単組成火山
   icon 秩父山火砕堆積物(Cb)
   icon 面房火山(Mb)
   icon 長浜火山(Nh)
   icon 観音浦火山(Kn)
   icon ハシルマ火山(Hm)
   icon 砂糠山火山(Sn)
   icon 221m山火山(Nn及びCbの一部)
   icon 262m山火山(Nr及びCbの一部)
   icon 那智山火山(NC及びCbの一部)
   icon 松山鼻火山,大沢火山及び高処山火山
   icon じょうご山火山(Jg及びCbの一部)
   icon 花立火山(Ht及びCbの一部)
   icon 穴の山火山(Ay及びCbの一部)
   icon 神戸山火山(Kb及びCbの一部)
   icon 天上山火山(Tj)

  icon 祇苗島

  icon 恩馳島

icon 文献

2014/03/25

このデータ集は5万分の1地質図幅 「神津島地域の地質」(一色,1982)から抜粋,再構成したものである.
このデータ集を引用する場合,次のように引用すること.
一色直記 (1982) 神津島地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1 図幅),地質調査所,75 p.

地質各説 - 神津島 -

秩父山火砕堆積物(Cb)
 Tsuya(1929)のChichibu-yama ejecta-bed,津屋 (1930)の秩父山軽石層,谷口(1977)の秩父山火山砕屑岩にほぼ相当するが,本質岩片が「軽石」といえる程多孔質ではなく,又,火山砕屑岩といえる程全体の固結度が高くはないので,ここでは秩父山稜地名だけは残して秩父山火砕堆積物という名称を使用することにする.この火砕堆積物は後述する流紋岩単組成火山形成の初期に放出され降下火砕物としてあるいは広義の火砕流として堆積したものすべてを一括したものである.島の南南東部の面房地区(例えば後述する6527c地点など)の道路切り割りで見られる,原地形に沿って堆積し,細かい整然とした層理の発達した,淘汰の良い軽石質(ここでは多かれ少なかれ発泡している本質岩片をこのように呼ぶことにする.一般的な軽石より孔隙が少ない)及び石質の火山灰―火山礫層は降下火砕堆積物と見てよいであろう.又,高処山稜南西,都道長浜多幸線 (224号線)の切り取り(第10 及び 11図),沢尻湾北方の同線の切り取り(第12図)などに露出している斜交 層理のよく発達した火砕物は火砕サージ堆積物と見てよいであろう.全島にわたる野外調査の印象から,火砕サージ堆積物の方が量的に多いと思われる.沢尻湾の南東約0.6km,都道224号線がゴヂノ沢を横切る辺りの道路切り取りでは,この火砕堆積物中に見掛けの落差0.1ないし6mの高角度の正及び逆断層が見られる.しかしそれらの走向を確認することはできなかった.又,村落の北東外れ,神津沢左岸の道路切り取りでも,この火砕堆積物中に見掛けの落差0.15ないし2mの中ないし高角度の主として正断層が観察される.これら正断層には共役関係をなすと思われるものがある.低角度で見掛けの落差が0.15mの逆断層が1本見られるこれら断層の組成因についてはよく分からない.神津島灯台の北北東約0.4km,葱の場の道路切り取り(6527c地点)では,第13図に示したように,風化してざらざらになった紫蘇輝石流紋岩溶岩を覆って,風化帯の存在で識別される2枚の火砕堆積物が見られる.下位のものは厚さ88cm,その下部は厚さ55cm,白橙色の軽石質火山礫で石質火山礫と炭化木片を含み,中部は厚さ約23cm,白橙色砂質ローム,上部は厚さ10cm,帯桃褐色ローム(風化帯)である.上位のものは厚さ375cm,細かい層理の発達した,淘汰の良い帯灰白色の軽石質及び石質の火山灰―火山礫である.両者の層理面を切ってクラック帯が発達し,その上位に無層理の飛砂によると思われる堆積物が載っている.その風化面を更に天上山稜火砕堆積物が部分的に覆っている.島の北部,ウバラ沢を道路が横切る付近では,白色の軽石質及び石質火山灰層の表面に褐色のクラック帯が発達しており,これを厚さ60cm及び25cmの黄灰色の固結度の高いロームが覆い,更に厚さ3m以上の白色軽石質及び石質火山灰―火山礫(異質岩片を含む)が覆っている.これらはいずれも秩父山火砕堆積物に属するものであるが, 多くの場合黒雲母流紋岩で岩質が類似しているため,どの噴火中心からもたらされたものか判断がつかない.

fig4
第10図 秩父山火砕堆積物に見られる斜交層理
高処山の南西,都道長浜多幸線(224号線)の切り取り
(図幅第14図)
fig4
第11図 秩父山火砕堆積物に見られる斜交層理
高処山の南西,都道長浜多幸線(224号線)の切り取り
(図幅第15図)
fig4
第12図 秩父山火砕堆積物に見られる斜交層理
沢尻湾北方,都道長浜多幸線(224号線)の切り取り
(図幅第16図)
fig4
第13図 葱の場の道路切り取り(6527c)の模式スケッチ
Mb:面房火山溶岩流;Cb:秩父山火砕堆積物;Tj:天上山の火砕堆積物
(図幅第17図)

 秩父山火砕堆積物を構組成する本質物質は主として黒雲母流紋岩であるが,異質及び類質物質が普通は角礫として,まれに円磨度の良い円礫として含まれる.例えば,沢尻湾の東方約0.35km,都道224号線から分岐して神戸山方面に向か神道路を約100m入った切り取りでは,径30cmの角閃石流紋岩円礫が,村落北東外れ,神津沢左岸の道路切り取りには径2cmの石質黒雲母流紋岩の円礫が見いだされている.Tsuya(1929,p.286-288)によると,この堆積物の中には既存岩石の破片として径数cmの流紋岩・石英斑岩・斑状普通角閃石閃緑岩・普通角閃石安山岩及び複輝石安山岩(紫蘇輝石普通輝石安山岩)が含まれるという.これら岩石の変質程度についての記載はないが,筆者が神津沢左岸で採取した径7 cmの石英斑岩角礫では粘土壌化・緑れん石化などが進んでいた.

 黒雲母流紋岩:西海岸,脊負崎の東方約0.4km,秩父山火砕堆積物中の本質岩塊.この岩石は白色,やや多孔質で,まれに径2mmに達する黒雲母斑晶が目につく.

 北東海岸,牛鼻の南で,後述するハシルマ火山稜紫蘇輝石流紋岩溶岩に覆われる,層理の良く発達した白色軽石層や,天上山稜東の大川で,後述する砂糠山火山稜溶岩を覆い,じょうご山火山稜溶岩に覆われると思われる軽石層は上記の流紋岩に比べて,著しく斑晶に乏しい黒雲母含有流紋岩である.


   前をよむ 前を読む 次を読む 次を読む