神津島を北方海上から見る.
左:じょうご山,左手前:穴の山,中央後方:天上山,右手前:神戸山
(図幅第3図)
神津島・祇苗(ただなえ)島・恩馳(おんはせ)島・式根島及びこれらに伴う小さい島々は,巨視的に見れば,活動的な伊豆― マリアナ島弧上の火山島である(第1図).これらの中で一番大きい神津島は東京都心から南南西約170 kmにあり,その平面形はひょうたん形で,北北東‐南南西の長軸が約6.5km,最大幅約5km,周囲約24km,面積約18.5km2である.本島は多数の火砕丘と溶岩円頂丘とから構成されており,単一の火山体ではないので,地形の起伏が激しい (上写真).最高点は島のほぼ中央部,天上山にあって,海抜571.5m 1)に達する.天上山は本島では最新の火山であって,その火砕丘や溶岩円頂丘の表面構造がまだ残されている.
海上保安庁水路部発行(1974)大洋水深図 G1406 及び G1506 による.水深の単位:m
(図幅第2図)
祇苗(ただなえ)島は神津島の東岸沖約1.5 kmにあり,北北西から南南東に並ぶ大小5個の小島からなる.地元ではそれぞれ地の祇苗( 第2図),祇苗(第3図),烏帽子,平段(ひらだん)及び角(かど)と呼ばれている.前2者はそれぞれ海抜73mと69m,植生のない急崖に囲まれているが,頂部には植物が繁茂している.後3者は低い岩礁で,5万分の1地形図「神津島」では,平段と角 とは続いた1個の岩礁として図示されている.地の祇苗には海食洞が2つあり,東側のものは貫通しており,西側のものも細い通路で島の反対側に抜けているといわれている.これら小島群は1個の溶岩円頂丘の名残であろう.
南南東に伸びた低い小半島状部分から見る
(図幅第4図)
北東にある地の祇苗から見る
(図幅第5図)
恩馳島は神津島前浜の西南西約5.8 km にあり,比較的大きい2個の岩礁とそのほか多数の小岩礁とからなる.北東の岩礁(第4図)は最高点が海抜60.0m, 南西のもの( 第5図)は36mで,多少の凹凸はあるが,海水準に近い低平部から幾つかの岩塔がそそり立つような地形をしている.これらも1個の溶岩円頂丘の名残であろう.
(図幅第6図)
同岩礁北東端部から見る
(図幅第7図)
式根島は神津島の北北東約14kmにあり,東西約3km,南北約2.3km,周囲約8km,面積約3.8km2で,湾入に富む.本島は東北東へ緩く傾斜する 低平・台状の溶岩円頂丘で,最高点は島の西端にあるが,海抜109mに過ぎない(第6図).
中央後方は神津島天上山
(図幅第8図)
1) 神津島・祇苗島及び恩馳島における海抜標高は,昭和55年11月30日,国土地理院発行,1:25,000地形図「神津島」(昭和46年 測量,昭和 54 年修正測量)による.
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