262m山火山(Nr及びCbの一部)
島の北部,神戸山稜南東方約1km,国土地理院発行,1:25,000 地形図「神津島」に示された標高点262mを中心に径約500mの範囲に分布する流紋岩円頂丘を,適当な地名がないので,仮に262m山火山と呼ぶことにする.この火山は Tsuya(1929)により彼の第二期の那智山溶岩の一部として塗色されている.谷口(1977)も彼の第I期の那智山溶岩の一部に含めている.しかし空中写真の判読,野外調査及び岩質の差異から,那智山溶岩(筆者の那智山火山,後述)とは独立の岩体である.那智山溶岩の前神は262m山稜南の谷の左岸(南岸)を通り,つづき堂の方へ連なっている. 那智山溶岩は黒雲母流紋岩であるが,この火山稜溶岩は普通角閃石含有紫蘇輝石流紋岩である.両溶岩の分布状態から見て後者の方が古いと判断される.この火山稜溶岩流の厚さは地形から見て,約50mと推定され,かなり浸食されている.下位の岩層(恐らく秩父山火砕堆積物)との直接の関係は確認されていないが,秩父山火砕堆積物の少なくとも一部よりは上位であろう.262m山稜北西から北へかけての道路切り取りには溶岩流の上部がわずかではあるが露出している.風化した塊状表面を層理の発達した軽石層が覆い,その風化面を更に天上山火山形組成の際の軽石層と思われるものが覆っている.
普通角閃石含有紫蘇輝石流紋岩:標高点262mの北方の道路切り取り,円頂丘溶岩.この岩石は白色で軽石質,斑晶として長石や石英のほかに,柱状で飴色の斜方輝石や鉄チタン酸化物が識別される.