神戸山火山(Kb及びCbの一部)
島の北端に位置する溶岩円頂丘を地名を採って神戸山火山と呼ぶことにする.この火山は Tsuya(1929)の第三期の神戸山溶岩,谷口(1977)の第III期の神戸山溶岩円頂丘に相当する.円頂丘溶岩は径約600mで,厚さは100-150m程度と見積もられる.頂部はいくつかの峰に分かれており,中央に東西に伸びた凹所が発達している.谷口(1977,p.137,Fig.3)はこの溶岩円頂丘を取り囲むようにしてクランブル角礫岩〔溶岩円頂丘の成長に伴って生じる.例えば,Macdonald (1972,p.108-121)10)参照のこと〕が分布することを彼の地質図に示している.神戸山稜南面の道路沿いには流紋岩岩塊からなる無秩序な堆積物が見られるが,これがクランブル角礫岩に相当するものであろう.しかし,表層部の少なくとも一部は火山活動終了後の崩壊によって生じた,非火山性の崖錐であろう.円頂丘溶岩が秩父山火砕堆積物の上に載ることは間違いないと思われるが,野外で直接の関係はつかめていない.溶岩流出に先立って形成された火砕丘あるいは放出された火砕堆積物と考えられるものも確認されていない.神戸山稜頂部では,円頂丘溶岩の表層部を構成する溶岩塊の集積を,厚さ45 cmで無層理の黄白色砂が覆っている.この砂は風化残留したもの,あるいは風で移動したものであろう.頂部では天上山火山噴出物の存在は確認されていない.
黒雲母流紋岩(NI 60071901):島の北部,神戸山山頂の凹所,円頂丘溶岩.この岩石は白色,軽石質で,斑晶として無色透明の石英・乳白色の長石のほかに,まれに径3mmに達する黒雲母が目につく. 肉眼的に花立火山稜溶岩に極めて良く似ている.鏡下では(第17図),
(図幅第VI図版1)
10) Macdonald, G. A. ( 1972 ) Volcanoes. Prentice-Hall, Inc. , Englewood Cliffs, New Jersey, 510 p.