“氷長石化作用”を受けたデイサイト溶岩(D)
この岩石は北海岸,返浜の東,おおやせの海食崖下部に露出している.Tsuya(1929)の第1期のα- Lava,谷口(1977)の返浜溶岩に相当する.Tsuya(1929,p.299)によると,この岩石は海岸に沿って250 m,高さ5mの岩体をなし,その分解した表面をChichibu-yama ejecta-bed(筆者の秩父山火砕堆積物)が覆っている.岩石は全体として帯黄白色を呈し,「焼け」が見られる.
“氷長石化作用”を受けた斜方輝石角閃石デイサイト:北海岸,返浜の東,おおやせ. この岩石は新鮮な破断面では灰色,部分的に黄白色を呈する.長さ3mmに達する白濁した長石や微細な黄鉄鉱粒が散点的に含まれる.割れ目に沿って見られる黄色泥状物質は,粉末X線回折法により,ジャロサイトと同定された.
試料のK2O量は6.83wt%〔Kaneoka et al.(1970,p.56,Table1)のaltered rhyolite,K= 5.67±0.16〕であるが,Tsuya(1929)が同一岩体から採取した別の試料ではK2O量が10.77wt%(この報告書のp.26, 第1表,No.1)と非常に多い.Kaneoka et al.(1970)はこの試料について0.28Maの K-Ar 年代を報告しているが,これは氷長石化作用の年代と見てよいであろう.これと似たような変質作用は伊豆半島南端,下田市東部の万蔵山流紋岩体を含む白浜層群(中新世―鮮新世)分布地域(片山, 1940; Mikami, 1952),神津島の南西約40kmにある銭洲(一色,1980a)などで知られている.