神津島火山 Kozushima Volcano


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icon 文献

2014/03/25

このデータ集は5万分の1地質図幅 「神津島地域の地質」(一色,1982)から抜粋,再構成したものである.
このデータ集を引用する場合,次のように引用すること.
一色直記 (1982) 神津島地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1 図幅),地質調査所,75 p.

地質各説 - 神津島 -

松山鼻火山(My及びCbの一部)・大沢火山(Os及びCbの一部)及び高処山火山(Td及びCbの一 部)
 島の南部にある,これら3個の火山は,岩質の類似や地形的な関係から,比較的短期間に上記の順に形成されたものと推察される.三浦湾を隔てて西側にある,秩父山稜東に開いた弧状の山稜はその構成物や山稜の東側は急傾斜で西側は緩くすそを引く地形を示すこととから,これら3火山稜円頂丘溶岩流出に先立って形成された火砕丘の火口縁と判断される.松山鼻火山は Tsuya(1929)の第一期のε2- Lava の一部,谷口(1977)の第II期後半の松山鼻溶岩円頂丘に相当する.大沢火山は Tsuya(1929)の第 一期のε2-Lava の残部,谷口(1977)の第II期後半の大沢溶岩円頂丘に,高処山火山は Tsuya(1929)の第 二期の高処山溶岩,谷口(1977)の第II期後半の高処山溶岩円頂丘にそれぞれ相当する.

 三浦湾奥の海食崖では,東から西へ(1)松山鼻火山稜円頂丘溶岩,(2)秩父山火砕堆積物,(3)面房火山稜 溶岩流と露出しているが,(1)と(2)との間は崖錐に覆われ,(2)と(3)との間は小さい谷に刻まれており,接触及び上下関係を知ることができない.円頂丘溶岩は径約600m,厚さ約80m,表面は比較的平坦で,北西から南東へ傾斜しており,三浦湾奥では溶岩下底も南東へ向かって次第に低くなってくると見られることから,南東へ流下したものと思われる松山鼻の北西約0.4kmの都道224号線の切り取りでは,この円頂丘溶岩が秩父山火砕堆積物の一部に覆われているようである.角振場へ下る道の分岐点から224 号線を150m程東南東へ行った道路切り割りでは,円頂丘溶岩の塊状表面を厚さ約1mの褐色砂が覆い, 更に厚さ約3m,斜交層理の発達した黒雲母流紋岩火砕堆積物(天上山火山形成に伴うもの)が覆っている.ここでは秩父山火砕堆積物は欠除している.

 大沢火山稜円頂丘溶岩は松山鼻火山稜それとの直接の関係が野外で観察されていないが,地形的には覆うように分布している.円頂丘溶岩は径約600m,厚さ約100m,平頂部には西北西から東南東に伸びる凹地があり,周縁部,特に東部は急な崖で終わっている.大沢と高処山との間の道路の切り割りでは,流紋岩塊(円頂丘溶岩の塊状表面の一部と思われる)を厚さ60cmの明褐色ロームが覆い,その上を白橙色,無層理の軽石質火山灰(厚さ100cm)で始まり暗褐色ないし黒色の砂質ローム(厚さ12cm)で終わる1単元の堆積物が覆い,更に厚さ3mあるいはそれ以上の斜交層理の良く発達した黒雲母流紋岩火砕堆積物(天上山火山形成に伴うもの)が覆っている.

 高処山火山稜円頂丘溶岩も大沢火山稜それとの直接の関係は野外で観察されていないが,地形的には覆うように分布している.円頂丘溶岩は東北東-西南西の長径約700m,短径約500m,厚さ約100mで円頂丘にふさわしい形態を示している(第16図).高処山稜北麓,道路曲がりかど近くの切り取りでは,流紋岩岩塊の集積(溶岩流の塊状表面あるいは崖錐)の上に厚さ40cm,風化生成物である,色粘土があり, その上を厚さ100cm,層理のある白色軽石質及び石質の火山灰―火山礫層,部分的な風化帯をはさんで厚さ約150cm,層理のある白橙色軽石質及び緻密ガラス質の火山礫層(上部に部分的にクラック帯が発達している)が覆っている.厚さ約150cmの火山礫層は道路西側にあるこの切り取りでは,左上方へ向かって薄くなっている.更にこの火山礫層の風化面を,径数10cmに達する岩塊を含む白色火山灰(天上山火山形成に伴うもの)が部分的に覆っている.

fig4
第16図 高処山溶岩円頂丘を東方から見る
(図幅第20図)

 これら3火山稜溶岩円頂丘は体積0.02km3前後でほぼ同規模であるが,松山鼻→大沢→高処山稜順に平頂丘から典型的な円頂丘の形態を持つようになる.それらの岩質も類似した黒雲母流紋岩であることから,円頂丘形組成が進むにつれて,流出する溶岩の粘性が高くなっていったことを示すものと思われる.

 岩質が類似しているため記載が重複するが,以下に各岩体から採取した試料について簡単な記載を行う.

 黒雲母流紋岩:多幸湾西南西端,松山鼻火山円頂丘溶岩下部の塊状部.この岩石は灰白色でガラス質,小孔隙が見られ,斑晶として乳白色長石・無色透明の石英のほかに径1mm以下の黒雲母が目につく.

 黒雲母流紋岩:多幸湾西南西端近くにある村営ロッジの西方約0.2km,間知石採掘場跡,大沢火山円頂丘溶岩からの落石.この岩石は灰白色でガラス質・孔隙が少なく,斑晶として無色透明な石英・乳白色の長石のほか径3mmに達する黒雲母が目につく.

 黒雲母流紋岩:高処山山頂の東方約 0.3km,谷の左岸の露頭,高処山火山円頂丘溶岩. この岩石は帯褐灰色(風化によると思われる)で石質,小孔隙に富み,斑晶として無色透明の石英・乳白色の長石のほかに径1.5mm以下の黒雲母が目につく.


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