最近の噴火
火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
火山研究解説集:薩摩硫黄島 概要版 目次 |
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- 薩摩硫黄島火山の硫黄岳
はじめに
薩摩硫黄島火山は,硫黄島島内での1990年代以前に起きた噴火の歴史記録こそないものの,平家物語の時代から噴気活動を続けている活発な活火山です.1990年代後半からは硫黄岳山頂火口で頻繁に火山灰を放出する小規模な噴火を繰り返しています.
また,昭和初期には硫黄島の東の沖合2kmで海中噴火が起き,昭和硫黄島を形成しました.この噴火は,昭和時代に国内で起こった噴火の中でも最大規模でした.気象庁による火山活動度の分類では,最も活動度の高いAランクに分類されています(2008年現在,国内の13火山がAランクに分類されています).
最近の噴火活動
硫黄岳の山頂部には,直径約400m,山頂から火口底までの深さが約140mの火口があり,その周囲や内部で,古くは硫黄の採掘が12世紀から,最近では1997年まで珪石の採掘が行われていました.1998年以降山頂火口内に生じた竪穴の火孔(山頂火口と区別するため,以後,「竪穴状火孔」と呼びます)から頻繁に火山灰が放出されるようになりました(右写真:硫黄岳山頂火口内での火山灰放出).この火山灰の構成物は火口内に堆積していた昔の噴出物が変質したものであり,新鮮なマグマが放出されたものではありません.
(詳しくは→詳細版2. 火山活動の最近の火山活動の推移へ)
硫黄岳山頂からは,火山灰の放出の有無にかかわらず,大量の高温火山ガスが放出されています.火山ガスは.SO2(二酸化硫黄)にして日量約1300トン程度放出されています.この量は,頻繁に爆発を繰り返す桜島火山の火山ガス放出量に匹敵し,噴火が起きていないときでも硫黄岳の地下では活発なマグマ活動が生じていることを示しています.
(詳しくは→詳細版3. 火山ガス・熱水活動のSO2放出量へ)
歴史時代の噴火活動
最近の大きな噴火は,1934年〜1935年に起きた海底噴火であり,噴火前には水深300m程度であった海域に新たに昭和硫黄島が形成されました.噴出したマグマ量は,1990-1995年に噴火した雲仙火山の平成新山ドームに匹敵する量(約0.2km3)であり,昭和時代に国内で起きた噴火の中でも最大規模でした.噴火は硫黄島と竹島の間のカルデラ縁に沿って生じています
平家物語によれば12世紀には既に人が硫黄島に定住してましたが,硫黄岳について噴火の歴史記録(古文書など,人によって記された噴火記録)はありません.しかし,最近の科学的調査によれば,500-600年前に硫黄岳山頂で爆発的な噴火が起き,火砕流が西側山麓まで流下したことが判明しています(→火山の生い立ち).
(篠原宏志)