Km5
急冷されてカリフラワー状の外形を示すスコリアからなる降下テフラで,川尻東露頭における全体の厚さは60 cm,スコリアの最大平均粒径約3 cm,変質した最大平均粒径1.5 cmほどの類質岩片を含む.スコリアが火山灰サイズまで細粒化するサイクルが2回認められ,全体がほぼ3等分される.スコリアは最初のサイクルのものがもっとも発泡が悪く,類質岩片も最初のサイクルが礫径がやや大きく(最大約3 cm),量も多い.噴出量は,4.0×106m3(DRE)である(藤野・小林,1997).
Km6
多くのテフラメンバーから構成されるテフラで,藤野・小林(1997)は8つのテフラメンバーに分けている.下位のメンバーほど,細粒な径0.3〜3cmほどのスコリアからなる厚さ8〜20cmの青黒色-黒色スコリア層(Km61,3,5,7)と,厚さ2〜3cmほどの赤紫色-褐色火山灰層(Km62,4,6)の互層があり,最上位に発泡のよいスコリア(最大平均粒径3.9cm)からなる厚さ25cmのKm68が堆積する.川尻東露頭では全体の厚さは90cmを越える.最上位のKm68を除きスコリアの発泡は悪く,急冷構造が認められる.火山灰層には,径数 mmの空洞や植物印象が残っており,急冷スコリアの存在も考えると,Km6は最上部のKm68を除いて水の関与が大きい噴火による噴出物と考えられる.
藤野・小林(1997)は,川尻漁港付近及び開聞崎西方にKm6に属するスコリアに覆われる溶岩流がわずかに露出することを見いだし,川尻溶岩流と命名した.地質図では露出がわずかなため図示していない.噴出量は,0.39×108 m3(DRE)である(藤野・小林,1997).
Km7
藤野・小林(1997)によると,ローム質堆積物により,火口から南東方向に分布軸が延びる下位のKm7aと,北北西方向に分布軸が伸びるKm7bに分けられる.
最下位のKm7a1は発泡の悪い黄褐色降下軽石層からなり,川尻東露頭での厚さは26cm,最大平均粒径は3.2cm,橙色の類質岩片(最大平均粒径2.3cm)を含む.薄い火山灰層を挟んで褐色降下軽石からなるKm7a2が堆積する.川尻東露頭での厚さは33cm,軽石はKm7a1よりよく発泡し,最大平均粒径も大きく5.0cmに達する.変質した類質岩片を含む.Km7a1とKm7a2は大隅半島まで分布する.川尻東露頭では,その上に火山灰層(厚さ8cm)が重なり,カリフラワー状表面を持ち発泡の悪い最大径6 cmに達する青灰色降下スコリア,及び平均最大粒径が3 cmほどの類質,異質岩片からなるKm7a3 (厚さ18 cm) がある. Km7bは,分布主軸は北北西であり,頴娃町側により厚く分布する.下位に発泡のよい黒色降下スコリア層(Km7b1)が,その上に褐色降下火山灰からなり,最大1.5cmの火山豆石を含むKm7b2がある.Km7a及びKm7bを合わせた噴出量は,1.0×108 m3(DRE)である(藤野・小林,1997).
Km7a直下の腐植土壌の放射性炭素年代測定を今回行い,2310±40yBP(Beta-175238)の値を得た( 第2表の2).このことから,Km7噴火は,2.3 kaに発生したと考えられる.
Km8 藤野・小林(1997)によるとローム質堆積物により下位のKm8aと上位のKm8bに区分される.このうちKm8aは,藤野・小林(1997)によるとやや発泡のよい細粒黒色降下スコリアで,分布軸がおそらく南に伸びており,確認できる露頭は少なく,川尻東露頭でも確認できなかった. Km8bはほぼ無層理の青灰色粗粒火山灰層で,川尻東露頭では厚さ57 cmある.藤野・小林(1997)によると,Km8bは開聞岳周辺にやや南東に延びた同心円状の分布を示す.噴出量は,Km8a,Km8b合わせて1.0×108 m3(DRE)とされる(藤野・小林,1997).