命名 新称.藤野・小林(1997)の中央火口丘溶岩流,溶岩ドーム.
模式地 開聞岳山頂.922 m標高点付近.
分布・層厚 885年溶岩流は885年スコリア丘斜面を鉢窪火口縁や西側へ流下しており,小岳[こたけ]も885年溶岩流で構成されている.層厚は小岳付近で約50mである.885年溶岩ドームは標高900m付近以上に,比高20mほどのプラグ状の高まりを作る.
層序関係 885年スコリア丘を覆うように分布する.885年溶岩ドームはKm12b10の溶岩破片からなるテフラにわずかに覆われる.
岩相 山頂南,海抜約600 m付近の登山道付近では,多面体ブロックに覆われた安山岩溶岩流を横切る.空中写真を見ると,885年スコリア丘の斜面を,複数の比較的粘性の低い溶岩流(885年溶岩流)が流下しているのがわかる.山頂西方,海抜500 m付近に開聞岳山体斜面からこぶのように突出した小岳溶岩(桑代,1967)も,この885年溶岩流に属する溶岩流の末端部である.さらに山頂部標高900 m付近に傾斜変換点があり,それより上が,粘性に富む溶岩がプラグ状に隆起した溶岩ドーム (885年溶岩ドーム)と判断される.
885年溶岩流,885年溶岩ドームの岩石は,径1〜4 mm程度の斜長石斑晶を大量(30 vol.%以上)に含み,斜方輝石・単斜輝石斑晶を数 %含む,開聞岳火山のなかで最もSiO2が多い斜方輝石単斜輝石安山岩溶岩(SiO2=57.02 wt%; 第1表)である.
地質年代 西暦885年のKm12b噴火後期に噴出した溶岩流及び溶岩ドームと考えられる.