磐梯火山 Bandai San


icon 研究史及び概要

icon 地質図

icon 地質各節
  icon 最初期火山噴出物(Bi)
  icon 後磐梯火山噴出物(Bu)
  icon 赤埴—櫛ヶ峰火山噴出物(Ba)
  icon 火山麓扇状地3堆積物(vf3)
  icon 磐梯葉山2火砕堆積物(Bn-HP2)
  icon 火山麓扇状地2堆積物(vf2)
  icon 小磐梯火山噴出物(Bk)
  icon 翁島岩屑なだれ堆積物(Bj)
  icon 磐梯葉山1火砕堆積物(Bn-HP1)
  icon 大磐梯火山噴出物(Bo, Boc)
  icon 火山麓扇状地1堆積物(vf1)
  icon 八方台火砕堆積物
  icon 望湖台溶岩(Bb)
  icon 離松火砕堆積物
  icon 中ノ湯火砕堆積物
  icon 琵琶沢岩屑なだれ堆積物(Bw)
  icon 鏡沼火砕堆積物
  icon 土湯沢岩屑なだれ堆積物(Bt)
  icon 江戸時代の噴煙活動とその火口
  icon 1888年噴火とその堆積物
  icon 1938年土石流堆積物(Bf)
  icon 1954年岩屑なだれ堆積物(By)

icon 2000年の火山性地震

icon 引用文献

2024/2/9
このデータ集は5万分の1地質図幅「磐梯山地
域の地質」(山元・阪口,2023)を,
一部抜粋し,再構成したものである.

このデータ集を引用する場合,次のように引用
してください.
山元孝広(2024)詳細火山データ集:磐梯山.
日本の火山,産総研地質調査総合センター
https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/bandaisan/
index.html)

地質各節

磐梯葉山2火砕堆積物(Bn-HP2;地質図では省略)

 磐梯火山で,約8万年前に発生したプリニー式噴火の産物で,分布主軸が東へ向く降下火砕堆積物からなる.

地層名 山元・須藤(1996)命名.本堆積物は中馬・吉田(1982)でHP2,千葉ほか(1994)で葉山2b軽石(HP2b)とされた降下火砕堆積物と同じものである.

模式地 耶麻郡猪苗代町見祢山の猪苗代スキー場駐車場(図
10 第10図のLoc. 10).

分布・構造 赤埴—櫛ヶ峰山体を覆う風成火山灰土,安達太良山麓の沼尻・湯川火砕流堆積物や伏拝・山崎岩屑なだれ堆積物を覆う風成火山灰土(東隣「二本松」図幅;阪口,1995),阿武隈山地内の高位・中位段丘の厚い被覆風成火山灰土(「川俣」図幅;久保ほか,2015)に挟まれている.

層序関係 赤埴—櫛ヶ峰山体を覆う風成火山灰土中では,御岳奈川テフラ(On-NG)と沼沢水沼テフラ(Nm-MZ)の間にある(図
10 第10図).

層厚 磐梯山南東山麓で100 cm以上の層厚を持ち,東に向かって層厚が減少する(第12図;山元,2012).降下火砕堆積物の8 cm等層厚線と面積の関係からLegros (2000) の手法で最小体積を積算すると約5×10-1 km3(堆積物の平均密度を800 kg/m3として岩石換算体積は約2×10-1 km3 DRE)となる.

岩相 模式地周辺では,厚さ120 cmの基質に斜長石の目立つ粗粒火山灰を持つ直方輝石単斜輝石安山岩の軽石粗粒火山礫からなる降下火砕堆積物からなる.軽石の最大粒径は約10 cmで,径5 cm以下の安山岩石質岩片を少量含んでいる.また,その基底部には,厚さ10 cmの基質に白色粘土を持った淘汰の悪い石質細粒火山礫からなる降下火砕堆積物がある.ガラス質の本質物は認められず,マグマ噴火に先行した水蒸気爆発の産物と判断されよう.
  千葉ほか(1994)は本報の磐梯葉山2火砕堆積物の上位に,これと同じ記載岩石学的特徴を持つ軽石を含んだユニットを認め,これを葉山HP2a軽石と呼んでいる.これに相当すると考えられる堆積物は,赤埴山斜面下部で磐梯葉山2火砕堆積物直上の風成火山灰土中に確認でき,径5 cm以下の軽石を多く含む独立したユニットであることは問題ない(図
10 第10図;Loc. 10).しかし,1)この堆積物は基質支持で,軽石間を火山灰土が充填していること,2)軽石よりも明らかに粒径の大きな安山岩の石質岩片が普通に含まれること,3)層厚が側方に急変することが指摘できる.1)から3)の特徴は,明らかにこの堆積物が噴煙柱からの降下物ではないことを示しており,山体斜面上で発生した二次堆積物と判断できる.含まれる軽石は直下の磐梯葉山2火砕堆積物から取り込まれたもので,直接,噴火に由来したと考えるべき根拠はない.同様な二次堆積物は猪苗代スキー場周辺で,磐梯葉山2火砕堆積物以外の層準からも見いだせることや,古期山体噴出物を覆う火山灰土中に不整合や堆積物の欠如がいくつもあることは,山体斜面上で火砕物の再移動がごく普通に発生していたことを示していよう(山元・須藤,1996).

年代 鈴木ほか(1995)は,風成火山灰土中の指標テフラとの層位関係から,磐梯葉山2火砕堆積物の噴火年代を83〜72 kaと見積もっている.本報でもこれに従い,その噴火時期を約8万年前としておく(表1 第1表).

fig2
第12図 磐梯葉山2火砕堆積物の層厚分布
数字は降下火砕堆積物の層厚で,単位はcm.Ad=安達太良火山,Az=吾妻火山,Bn=磐梯火山,Nk=猫魔火山.山元(2012)を一部修正.

 

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