中ノ湯火砕堆積物(地質図では省略)
本堆積物は,中ノ湯火口列を形成した水蒸気噴火による降下火砕堆積物である.
地層名 山元(2018)による.
模式地 耶麻郡北塩原村中ノ湯.
分布・構造 磐梯火山北西山腹の中ノ湯を中心に,長さ約1.7 kmで北西−南西走向の中ノ湯火口列が存在する( 第22図).中ノ湯の火口底には,その源泉が湧出しているほか,中ノ湯の東200 mには火口を満たす長径約30 mの池が存在する.山頂に伸びる火口列は1888年崩壊壁で切断され,現在残る火口底の上端付近に上ノ湯が存在した.旧上ノ湯付近は1888年噴出物で厚く覆われ,温泉場の痕跡は全く確認できない.
層序関係 Nm-NKを含むクロボク土を覆う( 第24, 27図).
岩相・層厚 中ノ湯火口列の周辺には,径60 cm以上の熱水変質を受けた安山岩岩塊を含む白色から明るい灰黄色の粘土分の多い砂質火山灰の基質を持った基質支持の塊状火山岩塊〜火山礫が,黒色土壌を挟んで1888年火砕堆積物の下位に分布している(Loc. 2; 第24図).層厚は,中ノ湯で2.5 mと最も厚い( 第23図).大きな火山岩塊の下面には,インパクト構造が普通に認められる.実体鏡下での観察では,新鮮なガラス光沢を持った火山灰は含まれておらず,水蒸気噴火の産物とみられる.中ノ湯火口列には多くの火口があるものの,火口列近傍の1888年噴出物とNm-NKを含む黒色土壌の間には,この降下堆積物1層しか確認できず,1回の噴火イベントで火口列が形成されたことを示している.本堆積物は1888年崩壊壁南縁のLoc. 4でも層厚36 cmで,径25 cmの火山岩塊を含む給源近傍の岩相を示すことから(第27図),1888年噴火で失われた小磐梯山頂にまで火口列が延びていた可能性が大きい.
年代 Loc.2の中ノ湯火砕堆積物直下から採取した木片(BAN502; 第23図)から2,540 ± 20 yBPの補正14C年代が得られ,その暦年較正年代は2.8〜2.6千年前と報告されている(山元,2018).この年代は琵琶沢岩屑なだれ堆積物の14C年代と一致している.
火山岩塊を含む灰黄色の粗粒火山灰からなる.この地点は大磐梯山と1888年噴火で失われた小磐梯山の間の鞍部で,黒色土壌の発達が良い.福島県磐梯町大磐梯山北(北緯37度36分23秒,東経 140度4分11秒; 第22図のLoc. 4).