鏡沼火砕堆積物(地質図では省略)
本堆積物は,鏡沼火口列を形成した水蒸気噴火による降下火砕堆積物である.
地層名 山元(2018)による.
模式地 耶麻郡猪苗代町,赤埴山山頂北の赤埴林道終点.
分布・構造 沼ノ平の南端には,鏡沼を横切って赤埴山山頂に伸びる長さ約500 mで北北西−南南東走向の顕著な火口列がある(第30図;山元・須藤,1996;山元,2018).鏡沼の底には1888年噴火で形成された噴石落下孔が多数残されている(千葉,2009).琵琶沢岩屑なだれのつくる崩壊地形を切断することから,琵琶沢岩屑なだれ発生後に形成されたことは明らかである.
層序関係 土壌層を挟んで琵琶沢岩屑なだれ堆積物を覆い,かつ,土壌層を挟んで1888年火砕堆積物に覆われる( 第23図)
岩相・層厚 赤埴林道の終点では(Loc. 7; 第22図),層厚35 cmで最大径5 cmの岩片を含む淘汰の良い黄褐色細粒火山礫からなる.含まれる火山礫は石質の安山岩で変質により黄褐色を呈しているほか,細粒火山灰の皮殻をもったものが多い.新鮮なガラス光沢を持った火山礫・火山灰は含まれていない.本堆積物の分布は鏡沼火口列周辺に限られることから,この火口列の噴出物とみられる.また,構成物の特徴から,水蒸気噴火の堆積物とみられる.
年代 鏡沼火口列は,層序関係から日本噴火志にある大同元年(806年)噴火(震災予防調査会編,1918)の産物である可能性が指摘されていた(山元・須藤,1996).しかし,大同元年とされる災害記述が,そもそも噴火現象を示すものとは考えにくく,この考えは否定されている(山元,2018).琵琶沢岩屑なだれ堆積物と1888年火砕堆積物の間の土壌の中間に鏡沼降下火砕物が位置することから,1千数百年前頃の水蒸気噴火で形成されたとみられるが,今のところこれ以上の時期の絞り込みは出来ない.
琵琶沢岩屑なだれ堆積物上に形成された鏡沼を含む長さ約500 mの火口列で,鏡沼火砕堆積物を噴出した.大磐梯山山頂から撮影.