1974 年2月から5月にかけて,東鳥海馬蹄形カルデラ内の新山及び荒神ヶ岳周辺で水蒸気爆発が発生した(今田, 1974a, b; 宇井・柴橋, 1975; Ui et al., 1977; 山形県消防防災課, 1976).この140 年ぶりの噴火はごく規模の小さな水蒸気噴火で,それに伴う降灰と融雪による泥流が発生した.火口はほぼ東西に並んで形成された(第59図).泥流は少なくとも6回発生しており,最大到達距離は 3-4 km である.4月には秋田県湯沢市や本荘市でも降灰が記録されている.宇井・柴橋(1975)は,小規模な鶏冠型噴煙(cock's tail jet)を認め,マグマ水蒸気噴火が起きた可能性を指摘しているが,新しいマグマに由来すると断定される本質岩片は認められていない(加納・丸山,1980).なお,1974 年の火口列の分布は1740 及び1800-1804年噴火によって生じた火口の分布と極めて類似している( 第58図).
宇井・柴橋(1975)によると,1974 年の活動は3週間ないし2ヶ月にわたる火山性地震の発生,さらに噴気口形成・地温上昇を前駆現象として,数日間断続的に噴煙を上げつつ火口を拡大し,融雪に伴う泥流の発生と細粒火山灰の降下が行われる活動のピークと,その後半年以上の噴気活動を残すというサイクルが相前後して2回起こっている.
(図幅第53図)