荒神ヶ岳溶岩
林(1984a)の新山溶岩及び荒神ヶ岳円頂丘溶岩を合わせたものである.鳥海山地域北西部,紀元前466年に形成された東鳥海馬蹄形カルデラ底を埋める安山岩溶岩流である.カルデラを埋積し北北西 7 kmの獅子ヶ鼻まで達している.多数のフローローブが認められ,噴出口はすべて新山付近であろう.体積は 0.79 立方km,最大層厚は 200 mに達する(林, 1984a).荒神ヶ岳山頂部には東西方向に延びた最大幅約30 m,長さ100-150 mの割れ目があり,有史時代に活動した割れ目火口である.岩質はかんらん石斜方輝石単斜輝石安山岩である.林(1984a)によると,斜方輝石単斜輝石安山岩も含まれる.
なお,林(2002)によれば,本溶岩の一部は西暦871年噴火による溶岩流とされる.
かんらん石斜方輝石単斜輝石安山岩(GSJ R57127)
産地・産状:象潟町中島台,赤川標高 640 m 付近の落差10 mの滝(末端崖).溶岩.
斑晶:斜長石,単斜輝石,斜方輝石(±単斜輝石縁),かんらん石(少量のスピネルを含む),鉄鉱
石基:斜長石,単斜輝石,斜方輝石,かんらん石,鉄鉱,シリカ鉱物
玄武岩質包有物を含む
斜方輝石かんらん石単斜輝石安山岩(GSJ R57128)
産地・産状:遊佐町,荒神ヶ岳南南西200 m,登山道沿い標高 2,060 m付近.溶岩.
斑晶:斜長石,単斜輝石,斜方輝石(まれに単斜輝石縁に囲まれる),かんらん石,鉄鉱
石基:斜長石,単斜輝石,斜方輝石,かんらん石,鉄鉱,褐色ガラス角閃石含有かんらん石単斜輝石玄武岩質包有物を含む(角閃石は周縁部がオパサイト化,かんらん石はスピネルを含まない).
新山溶岩
林(1984a)の新山円頂丘溶岩に相当する.鳥海山地域西部,東鳥海馬蹄形カルデラ内の新山溶岩ドームとその南の舌状溶岩流及び北方への崖錐状の溶岩流からなり(第43図),西暦 1801 年の噴出物である(1800-1804年噴火).溶岩ドームの部分は直径 300 m,比高 70 m,体積は 0.001 立方km で,荒神ヶ岳溶岩を覆う.なお,新山は別名,享和岳ともいう.山頂部では垂直方向の節理が発達する(第44図).また,東西ないし東北東 - 西南西方向に延びた,最大幅10 数m,長さ約100 m の割れ目がある.岩質は角閃石かんらん石含有斜方輝石単斜輝石安山岩である.
角閃石かんらん石含有斜方輝石単斜輝石安山岩(GSJ R57129)
産地・産状:遊佐町,東鳥海馬蹄形カルデラ内,新山山頂.溶岩.
斑晶:斜長石,単斜輝石,斜方輝石(まれに単斜輝石縁を持つことがある),かんらん石,角閃石(オパサイト化していない微斑晶),鉄鉱
石基:斜長石,単斜輝石,斜方輝石,鉄鉱,シリカ鉱物,ガラス玄武岩質包有物を含む.
左端は荒神ケ岳, 新山の右は七高山(カルデラ壁), 新山の下に荒神ケ岳溶岩の溶岩堤防が2列続いている
(図幅第I図版2)
(図幅第51図)