地層名 新称.
模式地 金山町沼沢にある沼御前神社の南西200〜300 m の沼沢湖湖岸.沼沢湖の水位が下がった時に露出する.
分布・構造 本火砕岩の分布は,模式地に限られる.
層序関係 会津金山火山岩を不整合に覆う.
層厚 模式地での層厚は7 m 以上.
岩相 本火砕岩は,基底部とその上の本体で岩相が異なる.基底部の厚さは1.6 m で,会津金山火山岩由来の変質したデイサイト火山礫を含む淘汰の悪い塊状の石質粗粒火山灰からなる.火山灰の固結の程度は低く,全く炭化していない木片を多く含んでいる.軽石やガラス質火山灰は確認できないものの,新鮮な斜長石,石英,角閃石の結晶片が火山灰には含まれており,これらは本質物であるかもしれない.これを覆う本体は,新鮮な黒雲母含有斜方輝石単斜輝石普通角閃石デイサイトからなる単源の塊状凝灰角礫岩からなる.含まれるデイサイト火山岩塊は多面体型で,その最大長径は1.6 m である.基質の中粒砂サイズの火山灰も全く同質の石質デイサイトからなり,その岩相は一見すると石質の火砕流堆積物と良く似ている.ただし,携帯型磁化方位計による野外での測定では各火山岩塊の磁化方位がまちまちでキューリー点温度以上の高温で定置したものとは考えられない.本堆積物のデイサイトの岩質は前山溶岩のものと同じであること,前山溶岩から約500 m 離れた谷沿いに分布することから,基底部火砕物は溶岩流出に先行した水蒸気爆 発(ないしはマグマ水蒸気爆発)で形成されたもの,本体火砕物は溶岩ドームからの崩落で形成された崖錐と考えている.
鏡下での本火砕物のデイサイトは,斑晶として斜長石 (最大長径4.6 mm ),石英(最大長径3.7 mm ),普通角閃石(最大長径2.2 mm ),斜方輝石(最大長径0.5 mm ),単斜輝石(最大長径0,5 mm ),鉄鉱(最大長径0.2 mm ),黒雲母(最大長径1.6 mm )を含み,その量比はこの順で少なくなる.斜長石斑晶の一部には汚濁帯を持ち集斑状組織をなすものがあるが,多くは清澄で単独斑晶をなす.普通角閃石斑晶は酸化を受け,黄色-赤褐色と多色性強い.黒雲母斑晶には薄いオパサイト縁を生じている.石基は,ハイアロピロティック組織を示す.
年代・対比 本火砕物基底部の木片からは,19,880±150 yBPの補正放射性炭素年代が得られており(山元, 2003)その暦年代は24 kaである.