地層名 高橋・菅原(1985)の「木冷沢(むくれさわ)溶岩」による.
模式地 金山町大栗山から上野原に至る木冷沢右岸の林道切り割り露頭.ただし原稿執筆時点では林道方面の植生が進み観察が難しくなっている.
分布・構造 本溶岩は沼沢湖北西1 km の独立標高点 652.5 m の高まりと東北東に約800 m 離れた小丘に分かれて分布する.両岩体の間は地形的に低くなっており,本溶岩よりも若い噴出物で埋められている.
層序関係 上位・下位の堆積物との関係は露頭で直接観察できない.地形的には,惣山溶岩の下位に位置している.
層厚 模式地での層厚は約150 m.
岩相 本溶岩は,黒雲母普通角閃石流紋岩の発泡したガラス質塊状溶岩からなる.惣山山頂のテレビ塔取り付け道路沿いでは赤色酸化した溶岩が角礫岩化している.
鏡下では,斑晶として斜長石(最大長径2.3 mm ),石英(最大径4.0 mm ),普通角閃石(最大長径2.4 mm ),黒雲母(1.5 mm ),鉄鉱を含み,その量比はこの順で少なくなる.全ての普通角閃石が酸化を被っているが,オパサイト縁は生じていない.石基はハイアロピリテック組織を持ち,火山ガラス中に,普通角閃石,黒雲母の微結晶がまばらに含まれている.本溶岩のSiO2含有量は71-72 Wt%,K2O含有量は2.2-2.4 Wt%である.
年代・対比 模式地の本溶岩のジルコンからは,71±16 ka のフィッション・トラック年代値が報告されている(山元, 1999b ).この値は上位の水沼火砕流堆積物の噴火年代よりも有意に古く,層序とは矛盾していない.