火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


鬼界カルデラの地形図

赤い破線はカルデラ縁を示します.

鬼界カルデラは,西20km,南北17kmの大型の海底カルデラで,関連する火山岩類が,硫黄島と竹島および周辺の岩礁群に分布します.

硫黄岳から南東方向,カルデラ内にある海底の高まりは,後カルデラ火山活動で形成されたと考えられています.高まりの傾斜は,頂部で緩く,側面ではそれより急になっている.このうち硫黄岳南方の「浅瀬」のみ海上に現れています.

小野ほか(1982)は,海底の高まりの閉等深曲線は7ヶ所あり,それぞれが噴出中心を表すと考え,さらに,カルデラ形成後の水深を500mと仮定し,海底の後カルデラ火山の体積を約17km3と推定しました.これに,硫黄岳(基底径約2.7km,高さ約700mの円錐とすると,体積〜1.3km3),稲村岳(底径約780m,高さ約230mの円錐形とすると,体積〜0.04km3噴火史),昭和硫黄島(〜0.37km3昭和硫黄島噴火経緯)を加えると,19km3になります.

Saito et al. (2001)においても,これらのカルデラ内にある隆起の体積から,薩摩硫黄島火山の後カルデラ期のマグマ噴出量を,45km3以上と推定しています.後カルデラ期は7300年なので,そのマグマ噴出率は,3〜6km3/1000年という値になります.この値は第四紀火山の平均的なマグマ噴出率である0.1-1km3/1000年(小野, 1990)よりも高く,後カルデラ期にもマグマ溜まりが存在し活発な噴火活動をしていることがわかります.

鬼界カルデラの海底地形図は,「海上保安庁海洋情報部」のWebサイト(海域火山データベース)より引用しました.