焼岳火山群は,過去の噴火から水蒸気噴火→マグマ噴火という噴火と水蒸気噴火のみで終わる噴火を繰り返してきたことがわかります.
水蒸気噴火のみで終わる噴火については,約2300年前のマグマ噴火の堆積物上に8枚,降下火山灰があることから堆積物に残すような水蒸気噴火をおよそ百から数百年に1回程度行っています. 一方,マグマ噴火の頻度は,各火山の活動期間がせいぜい数万年であり,各火山の地質ユニットの数が10以下であることから,単純な割り算で,水蒸気噴火より頻度が1桁小さい数千年に一回程度と考えられます(及川,2002).これは,最近約2300年間にマグマ噴火を一回しか行なっていない事とも調和的です.
火山群全体のマグマ噴出率は,活動期間全体で0.1km3/千年以上であり,新期のみだと0.4-0.1km3/千年です(及川,2002).日本の平均的な火山の体積は300.1km3 程度で,長期的マグマ噴出率は0.1-1km3/千年です(守屋,1983;小野,1990:など).つまり,焼岳火山群は,活動時期が短いがゆえに体積が小さいのです.焼岳火山 群のマグマ噴出量・率は,最近でも落ちていないようです.これらのことより焼岳火山群の活動は,まだまだ続くと考えられています(及川,2002).
それでは,今後はどのような活動を行っていくのでしょうか.焼岳火山群の山麓および山体に分布する火砕流堆積物は,ほとんど発泡していない岩片で構成されたblock and ash flow堆積物で,軽石やスコリアなどの降下火砕物を伴ないません(及川,2002).だだ,一つの例外は,白谷山火山起源の熊牧場火砕流堆積物で,火砕流の中に発泡のよい本質礫を普通に含みます.しかし,この火砕流も軽石やスコリアなどの降下火砕物を伴わないです(及川,2002).また,この火山群起源の降下スコリアや軽石も見つかっていません.
つまり,この火山群は一生を通して降下軽石やスコリアなどを生産する爆発的な噴火を行なわなかったのです.今後も焼岳火山群の活動は,水蒸気噴火のみで終わる噴火と水蒸気噴火からマグマ噴火へという噴火とを繰り返す可能性が高いと考えられます(及川,2002).マグマ噴火は,溶岩や溶岩ドームの先端が崩落し火砕流が発生するという噴火が起こる可能性がもっとも高いと考えられます.過去の噴火実績から,数千年に一回の割合で0.1km3(1億m3)オーダのマグマを噴出する噴火を,数百年から百年に一回の 割合で0.001km3(100万m3)オーダ以上の降下テフラを降らす水蒸気噴火を行なうと考えられます.おそらく山麓の堆積物に残らない1962-63年噴火程度の噴火は,もっと高い頻度で起きていると予想されます.