焼岳火山群は,中部地方の北アルプス(飛騨山脈)にある活火山,焼岳(2455.4m)を主峰とするいくつかの小火山の集まりです.焼岳火山は,北アルプスの香炉と称され,深田久弥の日本百名山に選ばれた,美しい火山です.
この火山群には,2つの活火山,焼岳火山とアカンダナ火山があり,そのうち焼岳火山は1907 - 39年にかけて活発に噴火,最近では1962-63 年に噴火し,焼岳小屋を破壊,小屋番の2人に大けがをさせました(一色ほか,1962; Muraoka,1962;Yamada,1962).また,火山から離れた山麓の中の湯においてですが,1995年に水蒸気爆発が発生し,作業員の方4 名が亡くなっております(三宅・小坂,1998).
このように活発な活動を続ける活火山ですが,山麓には日本を代表する山岳観光地「上高地」をかかえ,そこにはシーズン中には1日2万人弱の人が訪れています.そのため,この火山を深く理解することは防災上も必要です.
ここでは,焼岳火山群の形成史,過去の噴火活動などを紹介し,上高地の成因など周囲の地形環境に与えた影響を紹介します.
なお,「焼岳」の名は古くは長野県(信州)側のみで使われてていた名前で,岐阜県(飛騨)側では「硫黄岳」と呼ばれていました(たとえば,加藤, 1912b).そのため古い文献では硫黄岳の名が使われていることもあります.しかし近年では,「焼岳」の名が広く一般に使われているため,ここでも焼岳の名を使用します.
*このHPの年代表記について
14C年代測定で測られたものは,1950年を基点として,そこからさかのぼった年代yr BPで表記しています.なお,14C年代は,実年代とのずれがあることが知られていますが,それを実年代(暦年)に直した値はcal yr BP,cal ADなどcalがつけて標記しています.
14C年代測定以外のK-Ar年代などの年代測定で得られた年代値は,すべてka(千年前), Ma(百万年前)などとBPがつかない年代値で示しています.
より詳しい情報は引用されている論文を参照下さい.
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