焼岳火山群 Yakedake Volcano Group


はじめに

地形・地質概要

地質図・層序表

火山活動史
   旧期火山群
   新期火山群
   上高地の誕生

記載岩石学的特徴

最近の焼岳火山の噴火
   最近3000年間の活動
   1907-39年噴火
   1962-63年噴火
   1995年中ノ湯水蒸気爆発

噴火様式

写真
   火山体
   火口
   噴出物の産状

引用文献

著者:及川輝樹 2013/10/11

このデータ集の「火山活動史」については,
及川(2002)地質学雑誌, 「最近の焼岳火山
の活動」の「最近3000年間の活動」は及川ほ
か(2002)地質学雑誌 を主としてまとめたも
のである.

このデータ集を引用する場合,次のように引用
してください.
及川輝輝(2013)詳細火山データ集:焼岳火
山群.日本の火山,産総研地質調査総合センター
https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/yakedake/
index.html

地形・地質概要

 焼岳火山群は,北アルプス南部,安房(あぼう)峠(標高1790m)以北に位置するアカンダナ火山,白谷山(しらたにやま)火山,大棚(おおだな)火山,焼岳火山,岩坪山(いわつぼやま)火山,割谷山(わるだにやま)火山の7火山からなります(及川,2002).

 この火山群の東側には信濃川水系の梓川が,西側には神通川水系の高原(たから)川が流れ,これら河川の河床から山稜までの比高は1000m以上もあり急峻な地形をなしています.しかし,山麓には上高地,平湯(ひらゆ),細池(ほそいけ),小船(こぶね),安房(あぼう)平といったいくつかの小盆地(凹地)が存在します(図1).これらは,焼岳火山群の裾野と基盤岩が接する所にあることから,この火山群の活動による河川の堰き止めによって形成されたものと考えられています(加藤,1912b;小林,1966;原山,1990;及川ほか,2000;など).

第1図
第1図 焼岳火山群周辺の地形

 また,焼岳火山群の山麓,高原川流域には,6段の段丘が発達しています(小池,1978;磯ほか,1980).このうち最上部の段丘面(磯ほか,1980の本郷段丘)とそれより2つ下位の段丘面(磯ほか,1980の中越段丘)を構成する地層は,焼岳火山起源の泥流堆積物や火砕流堆積物やそれらの再堆積物で形成されています(小池,1978;磯ほか,1980;小石・大井,2004;福井ほか,2005).

 焼岳火山群の基盤は,飛騨外縁帯中古生界,美濃帯中生界,白亜系の笠ヶ岳流門岩類(原山,1990)と,これらを貫く第四紀花崗岩の滝谷花崗閃緑岩(Harayama, 1992)からなります.

 焼岳火山群周辺の滝谷花崗閃緑岩に隣接した地域では,約170万年前の前穂高溶結凝灰岩‐丹生川火砕流堆積物(300km3:原山, 1994;長橋ほか,2000),恵比寿峠-福田火山灰(380-48km3 Kataoka et al., 2001)の活動,約65万年前の貝塩‐上宝テフラ(>50km3:鈴木,2000;及川,2003),約40-30万年前の奥飛騨火砕流堆積物-大町Apmテフラ群(>74km3:原山,1990;原山ほか,1991;及川,2003)の活動と断続的に大規模な火山活動が起きている地域です.

 数十~百万年オーダの時間的スケールでとらえると,焼岳火山群の火成活動は,これら大規模な火成活動と一連のものと考えられます.


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