焼岳火山群は,粗粒な斜長石・角閃石の目立つ斑状の黒灰〜白灰色の火山岩で構成されます. いずれも斑晶として斜長石,角閃石,単斜輝石,斜方輝石,黒雲母を含み,かんらん石や石英を含むことがある複雑な斑晶組み合わせをもつ岩石です(及川,2002).しばしば,斑晶量の 異なる2種 類の火山岩からなる複合溶岩流を形成することもあります(焼岳円頂丘溶岩,下堀沢溶岩など).また,直径数〜十数cm程度の苦鉄質包有物を含むのも特徴です.全岩化学組成は,SiO2:57.5〜64.3%,K2O:1.4(SiO2:57.5)〜2.9(SiO2:64.1)%で中〜高カリウム系列に属する安山岩からデイサイト質の岩石です(及川,未公表).
最後のマグマ噴火の産物,焼岳円頂丘溶岩とその流出に伴う中尾火砕流堆積物については詳しい岩石学的検討が なされています(石崎,2002;Ishizaki, 2007).この溶岩と火砕流中の本質ブロックは,斑晶量が顕著に異なる火山岩から形成され,複合溶岩流をなしています(及川,2002).それは,白色のデイサイト(SiO2:64.3-64.6%),黒色安山岩(SiO2:59.8-63.9%)と,それらが混じった縞状溶岩で,いずれにも苦鉄質包有岩(SiO2:50.6-54.2%)が含まれます(石崎,2002;Ishizaki, 2007).それらの全岩化学組成と斑晶鉱物の組成から,デイサイトマグマと苦鉄質包有物として含まれる玄武岩質マグマが様々な状態で混合し,焼岳円頂丘溶岩および火砕流の本質ブロックをつくったと考えられています(石崎,2002;Ishizaki,2007).