古期録から見た火山活動史
江戸時代〜昭和初期に各種の記録に残された岩手火山の地変の一覧
(噴火・地震・噴気活動)
年代 信憑性 記載内容 詳細情報
記録 噴出物
天和三年(1683年) × 噴火
貞享三年(1686年) 噴火(薬師岳山頂部)・降灰
貞享四年(1687年) × 噴火(薬師岳山頂部)・降灰
元禄二年(1689年) × 噴火(薬師岳山頂部)・降灰
享保四年(1719年) × 噴火(薬師岳山頂部)・降灰
享保十四年(1729年) × 噴火(山腹)・溶岩流出
享保十六-十七年
  (1732年)
噴火(山腹)・溶岩流出
文政六年(1823年) 地震
大正8年(1919年) 水蒸気爆発(大地獄谷)
昭和9-11年
  (1934-36年)

×
噴気活動(薬師岳・大地獄谷・黒倉山)
噴火


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歴史資料を用いた噴火活動史の解釈に関する注意点・問題点]  

 明治時代以前の噴火活動の様子を知るには,当時の人々が書き残した古文書が手がかりとなります.しかし,当時は地震計などを用いて科学的な観測が行われているわけではなく,当時の人々の五感を用いた観察によっています.このため,人間に感じることのできないほどの小さな地震の発生はもとより,天候が悪く山を眺めることが出来なければ小規模な噴火活動が発生していても気づかないことがあります.また,古文書の記述が明確でないために,その解釈には曖昧な点が残ることもあります.また,当時の噴火活動の記録が年月を経るうちに散逸し,断片的にしか残されていなかったり,あるいは全く残されていない可能性もあります.
 また,検討を行う古文書自身についても,古文書の著者自身の体験を書き記したものであるのか,あるいは誰か他人からの伝聞,もしくは別の書籍等からの引用に基づくものかなど,について注意を払う必要があります.そのため,歴史資料を用いて噴火活動の検討を行う際には,古記録の解題調査(著者やその文書が書かれた背景などの調査)が不可欠です.
 極めてまれな例ですが,事象が日付順に並んでおり物事の順序に違いがあるはずのない個人の日記の記載事項において,月日が全く同じであるが年号が間違えられた記載が存在することに,編者(伊藤)は気づいたことがあります.日記形式で記述された古文書の中にも,筆者は毎日の記録を下書き(備忘録)として残しておき,後日(後年)に清書する場合があります.その際に何らかの手違いで間違った年号の巻にその下書きを書き込んでしまったものと思われます.
 歴史資料を用いた火山活動史の研究においては,当時の記録を尊重しつつも,記述内容をそのまま鵜呑みにはせず,同一現象を記載した全く別個人の記録や公的な記録と記述内容を照らし合わせるなど,慎重な検討を行う必要があります.