池田火山 Ikeda Volcano


icon 概要

icon 地質図

icon 研究史

icon 地形及び地質概説

icon 池田火山の噴出物
  icon 仙田溶岩
  icon 池田湖テフラ
    icon 池田火砕流堆積物(Ikp)
    icon 池底・鰻池マール噴出物(Imc)
    icon 山川火砕サージ堆積物(Yps)
    icon 池田湖火山灰(Ika)
  icon 鏡池マール群
  icon 鍋島岳溶岩ドーム(Nbd)
  icon 池田湖湖底溶岩ドーム(Ibd)

icon 引用文献

2014/07/15
このデータ集は5万分の1地質図幅 「開聞岳地
域の地質」(川辺・阪口,2005)から抜粋,
再構成したものである.

このデータ集を引用する場合,次のように引
用してください.
川辺禎久・阪口圭一(2005)詳細火山データ
集:池田火山.日本の火山,産総研地質調査
総合センター
https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/ikeda/
index.html)

池田火山の噴出物
   鍋島岳溶岩ドーム(Nbd)

  池田湖火山灰層堆積後,池田湖南岸に角閃石デイサイトの溶岩ドームがテフラの放出を伴って形成された.この溶岩ドームを鍋島岳溶岩ドームと呼び,先行して放出されたテフラを鍋島岳テフラ層(地質図には省略)と呼ぶ(宇井,1967;奥野・小林,1991).

 鍋島岳溶岩ドームは,地形的に西側山麓に分布する鍋島岳溶岩I,溶岩ドームの主部をなす鍋島岳溶岩II,鍋島岳溶岩IIが池田湖に崩落した後に,崩落崖下に成長した鍋島岳溶岩IIIの3つの岩体に区分される(奥野・小林,1991;第15図).噴出質量は約138×109 kgである(奥野・小林,1991). 鍋島岳の西麓及び東麓には,大底月[おおそこつき],小底月[こそこつき],水源地マールなどの爆裂火口がある(第1表 第14図).西麓の大底月が東西約140 m,南北約110 m,小底月が直径約50 m,東麓の水源地マールが直径約90 mである.いずれも鍋島岳溶岩ドームを破壊しており,放出岩塊は直接鍋島岳噴出物を覆うことから,鍋島岳噴出直後に形成された火口と判断され,鍋島岳溶岩ドームの活動に含めておく.

fig15a

fig15b
第15図 池田湖火山灰層中に発達する砕屑岩脈.A:開聞町仙田,B:山川町利永.ハンマーの長さは約32 cm.
(図幅第6.12図)

命名 宇井(1967).太田(1966)の鍋島岳溶岩. 

模式地 鍋島岳南及び北中腹の農道切り割り.

分布・層厚 池田湖南岸に位置する.鍋島岳溶岩ドームは,東西約500 m,南北約1200 m,比高190 m,北側約1/3が池田湖側に崩落している(第6.14図).

層序関係 池田湖火山灰を腐植土層を挟んで覆う.鍋島岳溶岩ドームに先行して鍋島岳テフラ(Nb)が周辺に堆積した.鍋島岳溶岩ドームを鍋島岳テフラ層は覆っておらず,テフラ噴出後に溶岩ドームの形成があったと考えられる.開聞岳テフラに腐植土層を挟んで覆われる.鍋島岳西麓の大底月・小底月,東麓の水源地マールは,鍋島岳テフラ及び鍋島岳溶岩ドームの堆積面を破壊している.

fig16
第16図 鍋島岳溶岩ドーム.
北半分が池田湖側に崩落している.背後は開聞岳.
(図幅第6.14図)

岩相 鍋島岳テフラ層は,鍋島岳の周辺2 kmほどの範囲に確認できる,スコリア,軽石,岩片及び火山灰からなる降下テフラである(第17図).奥野・小林(1991)は鍋島岳テフラ層を下位から黄褐色火山灰層(Nb-1),軽石及び類質岩片を含むスコリア層(Nb-2),細粒スコリアを含む火山灰層(Nb-3),スコリア層(Nb-4)に区分した.鍋島岳東約500 mの地点では,Nb-1は厚さ約9 cmの火山灰層で,火山豆石を含む.Nb-2は,厚さ約1 m,径30 cmほどのスコリアとそれより大きな40 cmほどの軽石を含むもっとも規模が大きな鍋島岳テフラで,下部ほど類質岩片が多い.Nb-3は厚さ12 cmほどで,いくつかのユニットが識別できる細粒のスコリア・類質岩片・火山灰からなり,火山豆石を含む.Nb-4は厚さ約50 cm,主にスコリアからなり,スコリアの最大平均粒径は12 cmほどである.いずれのユニットの本質物にも急冷構造が認められ,噴火に水の関与があったと見られる.奥野・小林(1991)によると鍋島岳テフラ層の噴出質量は,約62×106 kgと推定されている.

fig17a

fig17b
第17図 鍋島岳テフラ及び柱状図.
A:山川町利永.スケールは1 m.
(図幅第6.15図)

 鍋島岳溶岩ドーム本体は,暗灰色の苦鉄質包有物が多く認められる灰白色-暗灰色の単斜輝石斜方輝石角閃石デイサイト溶岩で,スコリア,軽石も同一の岩質である.鍋島岳溶岩ドームを構成するデイサイト溶岩の全岩主成分組成を 第1表 第1表2 に示す.鍋島岳南東山腹では,発泡度の違いによる流理構造が発達する(第18図).角閃石・斜方輝石・単斜輝石・斜長石が主な斑晶鉱物だが,まれに石英及びかんらん石も認められる.

fig18
第18図 鍋島岳溶岩ドームを構成するデイサイト溶岩.径2〜10 cmの苦鉄質包有物を含む.スケールは1 m.開聞町上野.
(図幅第6.16図)

地質年代 奥野ほか(1993)は,鍋島岳テフラ層に含まれる炭化木片の放射性炭素年代値から,鍋島岳の噴火年代を4.3 kaと報告している.


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