池田湖は東西約4.5 km,南北約3.5 km,水面標高66 m,深さ233 mのカルデラ湖である(第4図).東岸尾下[おさがり]集落の西沖約1 kmに,水深42 mの浅い部分があり,湖底に比高150 mほどの溶岩ドームと思われる地形がある.池田湖の東側には,現在の池田カルデラを形成した噴火と同時期に形成された松ヶ窪,池底,鰻池,成川,山川のマール群が北西-南東方向に並ぶ.また山川町南部の竹山から辻之岳,開聞町久世岳と直線上に並ぶ火山岩頸・溶岩ドームの配列や,噴気帯や変質帯の並びなどから推定される弱線,裂か系の走向も同様の北西-南東走向を示すことが多く(新エネルギー総合開発機構,1986),この地域に北西-南東方向の構造線が発達することが推定される.
集落や農耕地が広がるのは池田火砕流堆積物が作る火砕流台地.
(図幅第1.5図)
池田湖の南部及び北東部湊川沿いには,池田火砕流堆積物が作る火砕流台地が広がっている.池田湖からの自然流出河川はなく,湖水は周辺に湧水として流出している.
南方海上の鬼界カルデラで6.5 kaに発生した幸屋降下軽石,幸屋火砕流堆積物の堆積後,5.6 kaに池田火山の噴火が現在の池田湖付近で始まった(宇井,1967;小林・成尾,1983;奥野ほか,1995).この噴火に先行して池田湖南岸付近に角閃石デイサイトからなる仙田[せんだ]溶岩の噴出があった.池田火山の噴火は,池崎降下火山灰の放出から始まり,尾下[おさがり]降下スコリア,池田降下軽石,池田火砕流堆積物,山川火砕サージ堆積物,池田湖火山灰と続いた一連の噴火で,現在の池田湖の地形及び池底,鰻池,成川,山川などの爆裂火口及び火砕丘(池底・鰻池[うなぎいけ]),マール群が形成された.またこの噴火の後,開聞町仙田付近に鏡池[かがみいけ]マール群が形成されている.4.3 kaには池田湖南岸で,角閃石デイサイトマグマの噴出があり,鍋島岳[なべしまだけ]溶岩ドームを形成した.池田湖湖底には比高150 mほどの池田湖湖底溶岩ドームがある.
代表的な試料の主成分化学組成を第1表に示す.
(図幅第2.1表)
池田火砕流堆積物 1 |
鍋島岳溶岩ドーム 2 |
|
SiO2 |
71.28 |
69.20 |
TiO2 |
0.57 |
0.53 |
Al2O3 |
14.86 |
15.52 |
Fe2O3 |
3.22 |
3.56 |
MnO |
0.08 |
0.08 |
MgO |
0.88 |
1.10 |
CaO |
3.18 |
3.79 |
Na2O |
3.70 |
3.90 |
K2O |
2.19 |
2.12 |
P2O5 |
0.04 |
0.20 |