池田火砕流堆積物及び山川火砕サージ堆積物の上には,成層構造が発達した明褐色の火山灰層が厚く堆積している.この火山灰層を池田湖火山灰と呼ぶ(成尾・小林,1984).
命名 成尾・小林(1984).
模式地 指宿市池崎,開聞町仙田など池田湖西部付近.
分布・層厚 池田湖を中心にほぼ同心円上の等層厚線を描いて分布する(成尾・小林,1995).池田湖湖岸近傍では厚さが10 m以上に達し,池田湖南岸の上野溶岩上面には,火砕丘様の地形をつくっている.指宿スカイライン沿いの吉見山周辺では,幸屋テフラ上位の黒色腐植土中に厚さ数cmの明灰色火山灰層として認められる.
層序関係 池田火砕流堆積物を直接覆う.腐植土層を挟んで鍋島岳溶岩ドーム及び鍋島岳テフラ・開聞岳テフラに覆われる.
岩相 主に細粒の火山灰層で,火山豆石を大量に含み軽石などの本質物は最下部を除き含まれない.池田湖近傍,指宿市池崎や開聞町上野,山川町利永では,最下部に岩塊のbomb sag構造や,斜交層理が見られるサージ堆積物の特徴を示すユニットが池田湖近傍の露頭で認められるが,大部分は厚さ1〜2 cm以下の細かく水平に成層した降下火山灰層である(第13図).
池田湖火山灰層は,水を多く含んでいたらしく,砕屑岩脈や層内スランプ構造,ガリー浸食跡を見ることができる.池田湖南岸の上野溶岩,池底溶岩上面に堆積した池田湖火山灰層では,厚さが数cmから20 cmほどの砕屑岩脈が多数認められる(第13図).砕屑岩脈は,池田湖火山灰層内部から発生し,砕屑岩脈の構成物も周辺の池田湖火山灰層同様の細粒火山灰や火山豆石からなる.砕屑岩脈は池田湖火山灰層の上面近くまで達しているが,さらに上位に重なる鍋島岳テフラや,開聞岳テフラを切らない.成尾・小林(1995)は,池田湖火山灰層堆積中に発生した地震よる液状化で,砕屑岩脈が形成されたと考えた.
地質年代 5.6 kaの池田火砕流堆積物を直接覆い,4.3 kaの鍋島岳溶岩ドームに腐植土層を挟んで覆われることから,池田火砕流噴出直後に噴出したと考えられる.
Iun:上野溶岩,Ikp:池田火砕流堆積物,Ika:池田湖火山灰,Nb:鍋島岳テフラ,Km:開聞岳テフラ.スケールは1 m.山川町利永.
(図幅第6.11図)