火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


自然電位分布(1975年)

図に示したのは,1975年に硫黄島で行われた自然電位の測定結果です.図中の曲線は,等電位を結んだ線です.標高が高くなるにつれて自然電位は低くなる地形効果が稲村岳周辺ではみられます.しかし,硫黄岳西部の中腹(青色部)においては,南北の領域よりも相対的に自然電位が高いことがみてとれます.ここでは自然電位が標高とは相関しておらず,噴気活動に対応した熱水流動(→火山ガス)による異常と考えられます.すなわち,山麓の低温火山ガスは,火山ガスが天水と混合して形成された酸性凝縮水の沸騰により生じていることが推定されており(→火山ガス分別過程),この酸性凝縮水の流動によって自然電位が高くなっていると推定できます.

本調査は全国地熱基礎調査(地質調査所, 1976)の一環として行われた.未公表資料を改変.