火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


鬼界カルデラおよび薩摩硫黄島の位置

九州南部から西南諸島にかけて,フィリピン海プレートがユーラシアプレート下に沈み込んでおり,琉球弧の南北の火山列が分布します.薩摩硫黄島火山は,その火山列を構成する火山のひとつです.

薩摩硫黄島火山は,数10万年前から約7300年前までに,4回の大規模なカルデラ噴火を起こしています.この火山周辺の海底の陥没地形は,これらの噴火によるものと考えられています.硫黄島の西側にある緑色の部分(下の図)は,これらのカルデラ噴火以前に存在した火山の一部で,現在は,竹島とともに,カルデラ縁を構成しています.

下の図は,薩摩硫黄島の地質の概略図です.島の東半分は,約5200年前から活動を開始した硫黄岳(赤色)の山体で構成されています.硫黄岳の西には,約3000年前の噴火で形成された稲村岳(青色)があります.この2つの山体を形成したマグマの化学組成は大きく異なり,硫黄岳はSiO2濃度が70wt%程度の流紋岩,稲村岳は50wt%程度の玄武岩です.

また,硫黄岳の東の沖合には,1934-1935年の噴火で形成された昭和硫黄島という小さな島があります.このマグマは硫黄岳と同じ流紋岩です.

島の西側に分布する黄色の部分は,約14万年前と約7300年前のカルデラ噴火による堆積物です.

硫黄岳や稲村岳,昭和硫黄島は,カルデラ噴火後(後カルデラ期)に,鬼界カルデラの縁の近くの噴火で形成された山体と言えます.一方,右上の図の灰色の部分は,海底が水面下100mより浅い部分であり,カルデラの内部にも地形的な高まりがあることがわかります.これらの高まりも,カルデラ噴火後に形成された山体と推定されていますので,カルデラ縁だけでなく,カルデラの中央部分でも同様な噴火が起きていたと考えられます.

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Saito et al. (2002)のFig.1を改変.