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桜島火山地質図(第2版) 解説地質図鳥瞰図
1:まえがき-桜島火山周辺の地質-桜島火山の地形・地質概略

まえがき

 鹿児島県の桜島火山は日本のみならず,世界を代表する活火山である.1955年以降,南岳山頂火口での爆発的噴火が続き,2006年からは昭和火口での噴火も再開し,現在(2012年)でも,ほぼ連日,爆発を繰り返している.また100年前の大正噴火をはじめ,歴史時代にも大噴火を繰り返してきた.この桜島の火山活動を理解する上で最も基礎となるものは桜島の成り立ちであり,噴火実績図として精度の高い火山地質図を整備することが求められている.桜島火山の地質の大枠は,まず山口(1975)の地質図で確立された後,福山(1978)の成果をもとに本火山地質図の初版が1981年に出版されていた(福山・小野,1981).以来30年が経過する中で,Kobayashi(1988)の新たな地質図の公表や奥野(1997;2002)によるテフラの年代測定,古地磁気による溶岩の年代推定(味喜,1999),ボーリングコアの解析(宇都ほか,1999)など,火山地質に関するデータも初版当時とくらべ比較できないほど増大した.第2版では,これらの成果をもとに大幅な改訂を行うものである.なお改訂点については付録にまとめている.


桜島火山周辺の地質

 桜島のある鹿児島湾は東西の幅20km,南北の長さ70km の細長い湾で,東西両岸には急な崖が続いている.この鹿児島湾は南北に延びる正断層に沿った第四紀の沈降運動によって形成されたもので,湾の北にある霧島火山周辺地域も含め鹿児島地溝と呼ばれている.また,桜島より北の鹿児島湾奥部には姶良(あいら)カルデラが存在し,直径が約20kmの陥没地形をなしている( 第1図.)姶良カルデラでは,過去10万年間に限定しても,4回以上のブリニー式噴火と2回の大規模な火砕流噴火が発生している(長岡ほか,2001).さらに,姶良カルデラの内側,北東部の海底には直径約5kmで水深200mの若尊(わかみこ)カルデラがあり,現在でも海底で活発な噴気活動が続いていることから,活火山と認定されている.

 姶良カルデラでの最新の巨大噴火(2.9万年前)では,まず大隈降下軽石の噴出に始まり,最後は大規模な入戸(いと)火砕流が噴出した.この一連の噴出物は,姶良Tnテフラと総称され,テフラの総噴出量は約500km3と推定されている(町田・新井,2003).桜島火山はこのカルデラの南縁付近に位置しており,約2.6万年前に誕生した.カルデラ噴火の終了から3千年ほど後のことである.桜島西端の袴腰(はかまごし)の小台地はカルデラ外輪の一部で,鹿児島地溝を埋積した中部更新統花倉(けくら)層などの海成層からなり,表層付近を姶良Tnテフラが覆っている.


桜島火山の地形・地質概略

 桜島は東西12km,南北9kmで,その中央部には北岳・中岳・南岳の火口が南北に並んでいる.元は火山島であったものが大正噴火の溶岩により大隅半島との間の海峡が埋められ,九州島と地続きとなった.地質学的には北岳よりも南岳が新しく,2つの成層火山が重なった構造を持っている.なお,中岳は南岳の側火山である.

 北岳主成層火山体は溶岩と火砕岩の互層からなり,山腹から山麓にかけては顕著な溶岩末端崖を持つ溶岩流が分布している.北岳最後の噴火は軽石噴火であり,北岳山頂付近の地形は厚い軽石層で被覆されている.特に山頂の北斜面では溶結した軽石層かわずかに二次流動した地形を示す.また,北西山麓には広い扇状地が形成されている.側火山としては,東山麓に権現山溶岩,西山麓に,春田山・引ノ平溶岩が存在する.

 南岳主成層火山体は溶岩が卓越する成層火山で,その形成史は古期と新期に分けられる.南岳の古期の溶岩は流動性に富み,南から東山麓に広く分布している.これに対し,新期の溶岩はやや粘性が高く,比高の大きな溶岩皺や溶岩堤防を持つ凹凸した形態となっている.西山麓の野尻川下流域や東山麓の地獄河原では,現在でも扇状地が形成しつつある.南岳の側火山の一つ,東山麓の鍋山火砕丘は,マグマ水蒸気噴火に特有なタフコーンである.なお北東沖の海域には,安永噴火時のマグマの貫入により海底が100mほど隆起した潜在ドームが存在する.


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