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桜島火山地質図(第2版) 解説地質図鳥瞰図
4:桜島火山の岩石

 桜島火山の岩石 桜島火山から噴出した溶岩・火砕物は,中カリウム系列の安山岩〜デイサイトからなる.その組成は噴出時期により明瞭に異なっており( 第7図),新期北岳火山はデイサイト,古期南岳火山は安山岩,新期南岳火山の天平宝字噴火では安山岩〜でイサイト,文明噴火で最も珪長質なデイサイトが噴出した後,安永噴火からは噴出物のSiO2含有量が 減少するようになり,大正・昭和噴火では安山岩が噴出している.また,同じSiO2量で比較した場合,新期南岳火山噴出物は,新期北岳火山・古期南岳火山噴出物に比べ,K2O,Rb,Baなどの液相濃集元素には差は認められないものの,系統的にTiO2,FeO,Na2O,P2O2,Zr,Yに富み,逆にMgO,CaOに乏しい(宇都ほか,2005).したがって,新期南岳の活動開始時にマグマ供給系の変化があったことになる.同様な変化は,Zr/Thのような微量成分比でも顕著 で( 第8図-1),その比は古期北岳火山噴出物から古期南岳火山噴出物まで穏やかに減少した後,新期南岳火山噴出物で急上昇する傾向が認められる.ただし,新期北岳溶岩中の苦鉄質包有物は,これらと比べ最も高いZr/Th比を有している. 87Sr/86Sr同位体比については,SiO2量と正の相関が認められるため,単純に時間変化を議論することはできないものの,全体傾向としては時代とともに同比が減少する傾向がある( 第8図-2).桜島火山では,新期北岳溶岩中の苦鉄 質包有物が最も低い 87Sr/86Sr同位体比を有している.

 桜島火山のマグマ供給系の発展を考える上で重要なものは,姶良カルデラのマグマ溜まりの存在である.カルデラ形成時には入戸火砕流堆積物で代表される87Sr/86Sr同位体比が高くZr/Th比の低い地殻起源の珪長質マグマが噴出しており,その後もカルデラ下に存在していたことは,約1.6万年前に若尊カルデラから噴出した新島火砕流が示唆している.一方,苦鉄質端成分としては,新期北岳溶岩中の苦鉄質包有物で代表される87Sr/86Sr同位体比が低くZr/Th比の高いマントル起源の苦鉄質マグマが存在する.桜島火山では,両者の混合で中間組成の安山岩〜デイサイトマグマが形成されているとみられ,大局的には時代が新しくなるほど,マントル起源苦鉄質マグマの混合系に占める割合が大きくなったとみられる(宇都ほか,2005).ただし,珪長質端成分の化学組成は単純ではなく,噴火時期毎に起源が異なるものに入れ替わっていたらしい(高橋ほか,2011).そのような中でも,大正噴火と昭和噴火から今現在に続く噴出物の化学組成は同一変化トレンドを構成していることと,大正噴火以降の姶良カルデラを中心として隆起が起きていることからすると,大正噴火をもたらしたマグマ溜まりへの苦鉄質マグマの蓄積は継続しているものとみられる.


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