このデータベースには,『全国主要活断層活動確率地図』に示された、主要な活動セグメントごとのパラメータ代表値が収録されています.このパラメータは,各調査地点ごとの個々のデータから,一定の基準により代表値を求めたもので,その方法は以下のようになっています.

平均変位速度


  1. 野外における各調査地点での計測値(幅がある場合は範囲中央)を平均した値を代表値とした.その際,副次的断層など,明らかに活動セグメントを代表させるのに不適当な値は除外した.ただし,並走する断層で,それぞれから値が得られている場合は,それらを合算した.

  2. 活動セグメント内の1地点でのみ野外計測値が得られている場合は,その計測値幅の範囲中央を代表値と見なした.

  3. 上下変位成分については,その値を一般傾斜(角度)もしくは野外で直接観察された断層面の傾斜角度の正弦で除し,さらに横ずれ成分がある場合はそれらのベクトル和をとり,ネット値(実変位量)とした.

  4. 野外において計測値が得られておらず,かつ単位変位量平均活動間隔が独立して得られている場合は,単位変位量を平均活動間隔で除した値を平均変位速度の代表値とした.

  5. 野外において計測値が得られず,かつ単位変位量と平均活動間隔のいずれかの値も得られない場合は,原則として以下の基準に基づく仮置き値を採用した.

    1. 近隣に同規模・同走向の活動セグメントがある場合は,その活動セグメントの平均変位速度の値を与える.

    2. 地形表現から活動度を推定し,その代表値(A級:2.0m/千年,A級下位:1.0m/千年,B級:0.5m/千年,B級下位:0.3m/千年,B級最下位:0.1m/千年)を与える.



単位変位量


  1. 野外における各調査地点での計測値(幅がある場合は範囲中央)を平均した値を代表値とした.その際,副次的断層など,明らかに活動セグメントを代表させるのに不適当な値は除外した.

  2. 活動セグメント内の1地点でのみ野外計測値が得られている場合は,その計測誤差幅の範囲中央を代表値と見なした.

  3. 上下変位成分については,その値を一般傾斜(角度)もしくは野外で直接観察された断層面の傾斜角度の正弦で除し,さらに横ずれ成分がある場合はそれらのベクトル和をとり,ネット値(実変位量)とした.

  4. 野外において計測値が得られておらず,かつ平均変位速度平均活動間隔が独立して得られている場合は,平均変位速度と平均活動間隔の積を代表値とした.

  5. 野外において計測値が得られず,かつ平均変位速度と平均活動間隔のいずれかの値も得られない場合は,粟田(1999)に基づく以下の経験式を用いて得られた最頻値(断層に沿う単位変位量の空間分布のうち,定常的な値となる範囲の平均値)を代表値とした.


Lseg=4.9Dmax, Dmax=(3/2〜2)Dmode から Dmode=Lseg/8.575

ただし,
Lseg:活動セグメント長(km)
Dmax:単位変位量最大値(m)
Dmode:単位変位量最頻値(m)


平均活動間隔


  1. 地形・地質調査や歴史記録から複数回の過去の断層活動(イベントと呼ぶ)の時期が得られている場合は,それぞれの活動時期の間隔を平均した値を代表値とした.ただし,間隔を求める際にはそれぞれの活動時期の下限値と上限値の範囲中央を用いた.(図4参照

  2. ある期間の活動回数のみが得られている場合は,その期間を活動回数で除した値を代表値と見なした.

  3. 野外調査や歴史記録から過去の複数回の活動時期が得られなかった場合には,単位変位量平均変位速度で除した値を代表値とした.



図4



最新活動時期


  1. 地形・地質調査で最新活動(層準)が得られた場合,その層準の下位にあたる堆積物から得られた最新の年代値を最新活動時期の下限値,その層準の上位にあたる堆積物から得られた最古の年代値を最新活動時期の上限値とし,その幅をもって示した.

  2. 得られた年代値が14C年代の場合は,暦年較正年代(calibrated age)に変換して西暦で表示した.

  3. 個々の年代測定値に層位学的な逆転がある場合,その原因について原著文献に指摘がない限り,上位の層準から得られた古い年代値を再堆積によるものと見なして除外した.

  4. 最新活動時期が下限値しか得られていない場合,最新値は近代的記録が残存している明治元年(AD1868年)とした.

  5. 歴史史料に地震断層の出現や地震に伴う地殻変動の具体的な記録がある場合,もしくは野外調査から最新活動時期が十分に限定でき,なおかつその間にその活動セグメント近傍に甚大な被害を伴う地震の記録が唯一ある場合については,その地震発生時期をその活動セグメントの最新活動時期とした.



地震後経過率


最新活動からの経過時間をAD2010年を基準として計算し,その経過時間を平均活動間隔で除したものを地震後経過率とした.なお,経過時間に幅がある場合はその範囲中央を代表値とした.


将来活動確率


地震後経過率と平均活動間隔から地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)「長期的な地震発生確率の評価手法について」の方法に従い,活動間隔のばらつきαを0.24としたBPT分布モデルを用いて今後30年間における活動確率を計算した.また,過去の活動時期を考慮しない場合の将来活動確率として,ポアソン過程モデルによる今後30年の活動確率を求めた.