火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
GPS観測点の相対水平変位
IWOGを基準とした,繰り返しGPS観測点の相対水平変位ベクトル(1995年6月から2006年3月まで).右に示された各観測年月間の相対水平変位を,観測点ごとに示してあります.
観測期間中の顕著な変動としては,山頂火口南西のIWDK点の1995年6月~1997年4月の間の北東に数cm,山頂火口南側のF2点の1997年11月から2000年2月の間の北西に10cmを越える変位があります.井口(2002)は,前者の変位が1996年6月8日のM2.9の有感地震と関連したとしています(→地震活動).この頃には火口南縁に北東-南西走行の亀裂群が形成されるなど,地形変化を伴って火山活動が活発化しました(→最近の火山活動の推移).この亀裂群を挟むF1点とF2点での観測は1997年11月以降であるが,この期間においても火口側のF2点の火口中心方向への変位が認められます.F2点は2000年2月を最後に火山灰に埋積され,その後火口内への崩落により亡失しました.
山頂火口付近の特別に変動しているIWDKとF2の2点を除くと,観測点は,ぎざぎざした動きの中にも全体として火口に向かう成分があるように見えます.ぎざぎざした変化は,観測時間が数十分程度と短いための誤差の可能性もあるので,変動ベクトル図:1997.11〜2006.3では,より長期間の1997年11月と2006年3月(ARAYとID560は2002年11まで,F2は2000年2月まで)で変位傾向を見ています.