火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


昭和硫黄島流紋岩に含まれるマフィックインクルージョン

後カルデラ期流紋岩(硫黄岳および昭和硫黄島火山岩)には,玄武岩質安山岩〜安山岩組成のマフィックインクルージョン(mafic inclusion)が含まれています.マフィックインクルージョンとは,火山岩に含まれている苦鉄質の岩石で,その起源はマグマである場合もあれば,マグマが上昇中に捕獲した地殻・マントル物質である場合もあります.硫黄岳および昭和硫黄島火山岩に含まれるマフィックインクルージョンは,流体として捕獲された形状を示すこと,火成岩的組織を有することなどから,流紋岩マグマが苦鉄質マグマを捕獲して形成されたと考えられています.

この写真は昭和硫黄島流紋岩中のマフィックインクルージョンです.マフィックインクルージョンは,暗灰色で,最大20cm程度です.斜長石, 単斜輝石, 斜方輝石, カンラン石, 鉄・チタン鉱物の斑晶を含み,その大きさは斜長石が2mm以下,他は1mm以下で,斑晶量は15vol%以下です.石基鉱物は,斜長石, 単斜輝石, 斜方輝石,, 鉄・チタン鉱物, 磁硫鉄鉱があり,大きさは0.5mm以下.また,径5mm以下の泡を含みます.

一方,硫黄岳流紋岩のマフィックインクルージョンも同様な組織を示しますが,昭和硫黄島流紋岩のものに比べて,小さく(最大5cm程度),斑晶量も少ない(5vol%以下),存在度も少ないという特徴があります.

Saito et al. (2002) のFig.2を引用.ファイルサイズ縮小版.